大判インクジェットプリンターの搭載技術

大判インクジェットプリンターが搭載するワイドヘッドは、プリントヘッド技術「FINE」から生み出されました。高精細かつ高速の大面積プリントが壁面をおおうアート作品や建築CADなどへと活用され、活躍しています。

L-COA

画像処理からプリンター制御までを高速処理

イメージプロセッサー「L-COA」

大判プリンターの心臓部「L-COA」は、大容量の画像データの処理とプリントデータの作成※1、プリンターの最適制御をつかさどる専用イメージプロセッサーです。最高で30,720のノズルから最小4pl※2のインクを吐出する「1インチワイドヘッド」をL-COAが制御することで、大判プリンターの高画質印刷と高速出力※3を実現しています。L-COAは、キヤノンのプラットフォーム技術「システムLSI 統合設計環境」により開発されました。このチップでは、従来は複数のチップで行っていたプロトコル処理、画像処理、本体制御を1チップ化して、システム系の処理も集積化。これにより各処理の高速化と伝送タイムラグの短縮を実現し、大幅なスピードアップを達成しました。

  • ※1
    大容量のデータ
    A0判(841×1,189mm:A4の16枚分)のプリントをつくるためのデータ容量はおよそ3GBになる。
  • ※2
    pl (ピコリットル):1plは1リットルの1兆分の1。
  • ※3
    高速出力:最速でA0サイズを約53秒で出力。

LUCIA/LUCIA EX

プロのニーズに応える高画質12色顔料インク

CMYRGBインクによる全カラー領域表現

プリンターで使われるインクの種類には、染料と顔料※4があります。染料インクのような光沢感をもちながら、顔料インクの鮮やかさと耐候性があるインクが、キヤノン開発の「LUCIA」です。

キヤノンは「LUCIA」の12色顔料インクとして、CMYのインク色に対して色相的に対称(補色※5関係)のRGBの特色インク、濃淡2種類のグレーインク※6を開発。色再現性が拡大して、全カラー領域でバランスの取れた発色が可能になっています。光沢のある用紙など、多彩な用紙で高発色のプリントが可能です。

新顔料インクシステムの「LUCIA EX」は、高発色の顔料に刷新したことやさまざまな粒径の顔料の使用により、色再現領域を従来モデル比で最大約20%拡大しました。また、黒の品位を高めるインク設計で引き締まった黒色の表現にも成功し、プロの写真家やクリエイターからの高い画質要求に応えました。さらにインク材料の改良で、ブロンズ現象※7の低減や耐擦過性※8向上を実現しています。

  • ※4
    染料と顔料
    インクは、色素・溶剤・添加剤・水で構成されている。色素が分子レベルで溶けているのが染料インクで、色素が溶けずに分散しているのが顔料インク。染料インクは発色がよく写真との相性がよい、顔料インクは耐光性に優れているなど、それぞれに特性がある。
  • ※5
    補色
    色相環の配置で対称にある色。補色関係にある色同士は隣りあうと強調されて、彩度が高く見える。(例:マゼンタの花にグリーンの葉など)
  • ※6
    濃淡グレーインク
    暗部の階調の粒状感を低減する。またグレー部の印刷ではカラーインクの使用量を少なく、光源の影響を受けにくいプリントにする。
  • ※7
    ブロンズ現象
    照明光がプリント表面上で乱反射することにより、本来とは異なる偽色や金属光沢が見えてしまう現象。
  • ※8
    耐擦過性
    プリントされた表面をこすることなどでインク表面がはがれたり傷がついたりするのを防ぐ、インクの耐久性能。

リアクティブインク技術

CAD図面などの高精細プリントを実現する5色染顔料インク

リアクティブインク技術の概要

建築図面や設計図面の出力には微細な線を正確に描画する必要がありますが、キヤノンは、染料カラーインクに顔料マットブラックインクを反応させることで、文字や線の境界でのにじみを防止するリアクティブインク技術を独自に開発しました。

「5色染顔料リアクティブインク」は鮮明な黒を実現し、極細線や極小文字のプリントを可能にしました。さらに、1,200dpiレンダリング処理により、斜線や曲線はより滑らかに、小さな文字もつぶれることなくクリアに再現します。

ダイナミックレイアウトエンジン(DLE※9

ポスターやアルバムなどのレイアウトを簡単に自動編集

オートデザイン機能の概要

キヤノンの大判インクジェットプリンター専用のポスター作成ソフトウェア「PosterArtist」には、独自開発のDLE技術が搭載されています。DLEは使用するコンテンツを、それらの数とサイズに応じて適切に自動レイアウトするものです。その結果、煩雑な操作なしで、プロデザイナー品位の仕上がりを得ることができます。

基本アルゴリズムは、写真やテキストが収容されているサイズ可変な各コンテナ同士の間隔を伸縮するバネに見たて、コンテンツの理想のサイズと、バネの長さの差が最小になるように自動調整します。このアルゴリズムを採用した新開発のオートデザイン機能により、仕上がりのイメージやテキスト、使用する画像など最小限のデザインに必要な項目を入力するだけで、最適な配色とレイアウトのデザイン案が自動で生成されます。

  • ※9
    DLE:Dynamic Layout Engineの略。