医療機器の搭載技術

キヤノンは、光学技術とデジタルイメージング技術を活かし、医療のデジタル化やネットワーク化に対応したX線デジタル撮影装置や眼科機器などを提供しています。

X線デジタル撮影装置

X線撮影診断を確実にサポート

X線画像による医療診断でも、フィルムレス化やモニター診断などのメリットが評価され、デジタル化が進んでいます。キヤノンは、独自のX線イメージセンサーを搭載した、世界初のX線デジタル撮影装置CXDI-11を1998年に発売。以来、多様なX線診断ニーズに応えるために製品ラインアップを拡充し、この分野をリードしてきました。

静止画対応X線イメージセンサー

医療診断に欠かせないX線撮影は、デジタル化・オンライン化が進んでいます。キヤノンのX線イメージセンサー「LANMIT※1」を搭載したCXDIシリーズは、低線量で高画質の医用データを得られるデジタルラジオグラフィ機器です。

LANMITは、蛍光体を光センサー上に積層した平面構造で、蛍光体層とアモルファスシリコンなどの5層構造の光センサーからなります。人体を透過したX線を蛍光体層で可視光線へと変換し、光センサーが直接読み取ります。蛍光体には、光変換効率が高いヨウ化セシウム(CsI)を採用することで、必要X線照射量の低減と画像の高精細化を両立しています。

開発にあたってはノイズの低減が大きな課題でしたが、キヤノンは専用IC、信号処理回路、電源などを独自で開発。ノイズの少ない、有効撮影範囲43×43cm、720万画素の大画面イメージセンサーを実現しました。

読み取られたX線画像は、わずか3秒でモニター表示されます。システムは、汎用インタフェースを採用、最新の医用情報通信規格に対応したコントロールソフトウエアを装備しているため、撮影画像は院内のネットワークを利用して情報共有や病院外への転送して活用することが可能です。遠隔地医療や緊急医療の現場で威力を発揮しています。

ポータブルタイプCXDI-50Cの構造
LANMIT断面図のイメージ
  • ※1
    LANMIT(Large Area New MIS Sensor and TFT)
    キヤノンは1993年に研究開発を開始、1998年にはLANMITを搭載した世界初のX線デジタル撮影装置(CXDIシリーズ)を発売した。

動画・静止画対応X線デジタル撮影装置

キヤノンは、動画撮影を可能にしたX線イメージセンサーを新たに開発し、CXDI-50RFに搭載しました。この製品の特長は、動画による透視撮影と高精細な静止画撮影の両方が1台で行えることです。この特長を活かしてCXDI-50RFでは、胸部や四肢などを診断する通常の静止画撮影に加え、消化器などの器官を動画で観察しながら、適切なタイミングで静止画撮影を行う「透視撮影」が可能になりました。

CXDI-50RFのもう一つの特長は、大判ながら軽量のポータブルタイプであることです。キヤノンは、これまで培ってきたポータブルイメージセンサーの設計技術を活かし、動画・静止画の両方が撮影可能で、かつ、ポータブル性を備えたX線デジタル撮影装置を実現しました。装置の持ち運びが容易なため、午前中はバリウムを飲んだ被験者の消化器を臥位撮影し、午後は据付場所を変えて胸部の立位撮影に使用するなど、柔軟で効率的な運用を可能にしています。

ワイヤレスX線デジタル撮影装置

CXDI-70C Wireless/80C Wirelessは、医療現場からの要望に応え、無線によるPCへの撮影データ送信を可能にしています。ケーブルをなくしたことで操作性および可搬性が格段に向上して、X線撮影室だけでなく、ベッドサイドや手術室などで使用でき、検査技師と患者双方にとってストレスの少ないX線撮影を実現しました。

可搬性向上のための小型化および軽量化※2については、センサーからの読み出しを省力化することで、必要とする電力を削減し、厚さ7mmの薄型バッテリーパックを新たに設計しました。さらに、製品の構造材に比強度の高い材料をベースにした複合材料を使用するなど、信頼性を確保しながら、小型化と軽量化を実現しています。こうした改良によって、コンパクトな設計ながら胸部、腹部などの撮影が可能な大判の70C Wireless※3に加え、小型で操作性が良く、小児、乳幼児などの撮影にも適した80C Wireless※4を開発しました。

CXDI-70C Wireless/80C Wireless(左はバッテリーとチャージャー)
ワイヤレスX線デジタル撮影装置の開発風景

また、高画質化は正確な診断を支える上で非常に大切です。キヤノンは、画素ピッチが従来機(160μm)よりも微細(125μm)ながらも感度を高めた、高精細・高感度なX線平面センサーを開発。さらに、Csl(ヨウ化セシウム)の高輝度蛍光体をセンサーに組み合わせることで、患者の負担を軽減する低X線量の撮影と、診断に適した高画質画像の提供を実現しました。

高精細化による画素数の増加は、一方で通信への負荷も増大させます。キヤノンはこの問題をクリアするために、効率良い画像分割と再構成方法を新たに開発するとともに、高速無線LAN規格IEEE802.11nを採用。約3秒のプレビュー表示と約5秒の高精細表示を達成し、スピーディーな診断を可能にしています。

  • ※2
    CXDI-70C Wireless:3.4kg(バッテリー含む)/ 80C Wireless:2.3 kg(バッテリー含む)
  • ※3
    CXDI-70C Wireless:有効撮影範囲 350×430mm / 外形寸法 384(幅)×460(奥行き)×15(厚さ)mm
  • ※4
    CXDI-80C Wireless:有効撮影範囲 274×350mm / 外形寸法 307(幅)×384(奥行き)×15(厚さ)mm

散瞳・無散瞳※5一体型眼底カメラ※6

1台で散瞳・無散瞳両方式の眼底検査を実現

眼科機器の分野で数々の実績をもつキヤノンのCX-1は、キヤノンで初めての散瞳・無散瞳一体型の眼底カメラです。

CX-1

従来の散瞳・無散瞳一体型眼底カメラでは、眼底を無散瞳で観察するために専用の光学系とセンサーを搭載することが必要で、眼底カメラの構成を複雑にしていました。キヤノンは、これまで一眼レフカメラで培ってきた光学技術、最先端のデジタルイメージング技術と眼底カメラの技術を融合し、キヤノンならではのコンパクトな一体型眼底カメラを実現しました。CX-1は高感度、低ノイズであることに加え、独自の画像処理技術が駆使されたことで、これまで以上に高精細・高画質な撮影が可能となり、診断精度の向上に貢献しています。

CX-1で撮影した健常眼の画像(左:カラー撮影モード、右:自発蛍光撮影モード)

またCX-1は、カラー撮影、レッドフリー撮影、自発蛍光撮影など五つの撮影モードを搭載しています。撮影者は操作パネル上のボタン操作のみでモードが切り替えられるので、迅速かつ効率的に眼底を撮影することができます。五つの撮影モードのうち、特に無散瞳での自発蛍光撮影は、検査時間が短く患者への負担が軽微であることから、医療機関より高い評価を得ています。

  • ※5
    散瞳・無散瞳
    眼底カメラを使った検査は、散瞳剤を点眼し、瞳孔を開いて検査する散瞳撮影によるものと、散瞳剤を使用しない無散瞳撮影によるものに分けられる。一般に散瞳撮影では、無散瞳撮影に比べて詳細な検査が行えるが、散瞳剤の影響で被験者がしばらくの間、強い眩しさを感じてしまうなどのデメリットもある。そのため、医師の判断で撮影方法が選択される。
  • ※6
    眼底カメラ
    目の奥の網膜や血管の状態、出血の有無を診るための撮影装置で、多岐にわたる眼科疾患の診断や高血圧・糖尿病など生活習慣病の早期発見に役立っている。

フルオート非接触眼圧計

眼圧をフルオートで高精度測定

非接触眼圧計TX-20Pの患者側外観および空気噴射ノズル部拡大図

眼科治療で必要な「眼圧※7」の測定は、角膜の圧力を測定して実施されます。測定には「非接触眼圧計」が使われ、これは対物レンズの中心に埋め込まれた空気噴射ノズルを被検眼に近接させ、角膜の中心に空気を吹き付けて計測するしくみです。従来の手動操作の機器は、眼の動きを追従するため正確なアライメント操作が難しく、検査者の熟練が必要でした。

キヤノンは、この眼圧測定操作をフルオート化するため、次のような技術を開発しました。

  • 広い範囲から被検眼を検出する安全でスピーディなラフオートアライメント駆動技術
  • 動きやすい被検眼でも被検眼角膜頂点の位置を正確、かつ敏速に検出するファインオートアライメント駆動技術
  • 被検眼に空気噴射ノズルが近接しすぎないように制御する安全駆動制御技術
  • 測定部(対物レンズ)をスムーズに移動させる3次元駆動技術

これらの技術を採用した「フルオート非接触眼圧計TX-20P」は、簡単な操作で安全かつ正確に眼圧測定が行えます。眼科病院以外にも、人間ドックや生活習慣病検診などで導入が進んでいます。

  • ※7
    眼圧
    眼球内の眼内液の圧力のこと。眼圧異常でおこる病気に「緑内障」があり、失明原因の上位を占めている。