環境配慮技術

キヤノンは、環境への影響を考え、製品を「つくる」「つかう」「いかす」といった製品ライフサイクルのすべてのステージで、環境負荷低減を推進。そのベースとなる独自の環境配慮技術の開発に注力しています。

高機能バイオマスプラスチック [つくる]

バイオマスプラスチックを使用した業界最大の複合機用外装部品の開発

植物資源からつくられるバイオマスプラスチックは、環境負荷の低減に有用な材料として注目されています。しかし、石油由来の従来のプラスチックに比べて、難燃性、耐衝撃性、耐熱性、成形性などでは劣るため、これまでその用途は限られていました。オフィス用複合機においても、バイオマスプラスチックを利用できるのは製品内部のごく一部でしかありませんでした。

2008年、キヤノンは東レ株式会社との協力により、新たな材料設計技術と成型加工技術を確立し、材料特性を大幅に向上させた高機能バイオマスプラスチックの開発に成功しました。この新材料の難燃性は、オフィス用複合機に適用可能なバイオマスプラスチックとしては世界で初めて、UL規格94※1の5Vレベルを達成。新材料の外装部品への採用が可能となったことで、キヤノンは、複合機imageRUNNER ADVANCEシリーズの外装部品の一部に採用しました。

そして2010年、キヤノンと東レは、バイオマスプラスチックを使用した複写機・複合機業界最大※2の外装部品の開発に成功しました。キヤノンの大型部品を成形できる高度な金型技術と、東レの材料設計技術によってつくられたこの部品は、キヤノンのデジタルプロダクションプリンター用のものです。imageRUNNER ADVANCEシリーズに採用した部品に比べ、大きさは約11倍、重さでは約6.5倍のサイズとなっています。

バイオマスプラスチックは、従来の石油系のプラスチックに比べて製造時のCO2排出量を約20%削減する、優れたエコ特性を合わせ持ちます。キヤノンは、このバイオマスプラスチックの改良を重ねながら、適用範囲や用途の拡大を目指し、さらなる技術開発を進めていきます。

世界最高水準の難燃性能をもつバイオマスプラスチック
デジタルプロダクションプリンター向けの
バイオマスプラスチック外装部品
  • ※1
    UL規格94
    米国のUnderwriters Laboratories Inc.(アメリカ保険業者安全試験所)が定めた安全性基準の一つで、材料の難燃性の尺度として広く用いられる規格。等級は難燃性の高い方から5V、V-0、V-1、V-2、HBとなっていて、最高等級の5Vは大型のオフィス機器や家電品の外装部品に使用することが可能。
  • ※2
    2011年8月10日現在。キヤノン、東レ調べ。

揮発性有機化合物の代替技術 [つくる]

生産段階でのVOCsリデュース

フッ素系溶剤の回収リサイクル機能を付与した生産装置

さまざまな部品加工には一般的に有機溶剤系の塗料や洗浄剤が使用されています。キヤノンでも例外ではなく、プリンターやカメラなど多くの製品で外装部品の塗装・洗浄工程に有機溶剤を使用してきました。有機溶剤は使用するとVOCs(揮発性有機化合物)ガスが発生するので、排出量を削減する必要があります。

キヤノンはVOCs排出量の少ない洗浄剤・塗料への切り替え、溶剤回収装置※3の導入により、VOCsの排出量の大幅削減に取り組んできました。そして、塗料はVOCsを含まない水溶性のものを開発し、塗装工程では、従来のVOCsから水を主溶媒とした水系塗料を既にコンパクトデジタルカメラの一部の部品へ使用しています。

また洗浄工程では、ガス回収しやすい低拡散性VOCsの洗浄剤に切り替え、回収リサイクル機能を付与した生産装置を導入することで大気排出を大幅に抑制しています。さらに、VOCsの少ない洗浄剤への切り替えも行っています。

  • ※3
    溶剤回収装置
    低濃度VOCs ガスを回収して高濃度化する装置。この装置技術により、VOCs ガスを90%以上回収。高濃度VOCsガスは液化され、洗浄工程内でリサイクルされる。

クリーナーレス現像技術 [つくる]

複合機の小型化と省エネルギー化を実現

複合機では、感光ドラムから中間転写ベルトにトナーを転写後、一部のトナーが感光ドラムに残ることがあります。この転写後の残トナーは電荷のばらつきがありますが、キヤノンは、補助帯電ブラシを配置して再帯電を施すことによってばらつきを抑制し、現像ローラーによる残トナーの回収を安定させています。

クリーナーレスシステム

このクリーナーレスシステムにより、それまで必要であった残トナー回収のためのクリーナー機構が不要になり、複合機本体の小型化を実現。トナーについても、通常は回収トナーとして廃棄されていたトナーが再利用されるため、効率的に使用できます。さらに、複合機imageRUNNER ADVANCEシリーズでは、定着温度を低く設定できる低融点トナーを採用することで、省電力化を目指しました。しかし、従来の補助帯電ブラシのままではブラシを汚してしまう傾向があり、それが画像不良の原因となってしまいます。そこで、キヤノンは、新たに補助ブラシを回転するファーブラシにすることでこの問題を解決し、クリーナーレスシステムの一層の適正化を図りました。

クリーナーレスシステムは、imageRUNNER ADVANCEシリーズの小型化と省エネルギー化を同時に実現しています。

オゾンレス帯電技術 [つかう]

オゾン排出を約1/1000以下にする

レーザープリンターや複合機などの電子写真製品では、感光ドラムを帯電させて電気的な像を形成します。従来は、約5~10kVの高電圧をかけてコロナ放電※4を起こすコロナ帯電方式が用いられており、放電により発生するオゾン(O3)を取り除くためのフィルターやエアーフロー機構が必要でした。

オゾンレス帯電技術の概念

そこでキヤノンでは、ローラーに交流と直流を重畳した電圧をかけて感光ドラムを帯電させる「ローラー帯電方式」を開発。空気中の放電を利用するコロナ帯電方式よりオゾンの発生量を約1/1000以下、電圧も約1/5以下に低減しました。この技術によってオゾン対策の機構も不要となり、レーザープリンターや複合機の小型化も実現しています。

  • ※4
    コロナ放電
    とがった電極(針電極)に電圧をかけると起きる放電現象。暗所では王冠状の光(光冠:コロナ)が見える。

トナー定着技術 [つかう]

待機時の消費電力を大幅に低減

レーザープリンターや複合機は、定着ローラーで熱と圧力を加えて、トナーを用紙に定着させます。従来のローラー定着方式では、ローラー内部のヒーターでローラーを温めるため、プリント待機中もヒーターをつけておく必要がありました。

オンデマンド定着(SURF)技術

オンデマンド定着方式のしくみ

キヤノン独自の「オンデマンド定着方式」では、熱伝導効率が高く熱容量が低い「定着フィルム」と、線状の「セラミックヒーター」を採用しています。薄い定着フィルムとセラミックヒーターが接触する構造で、定着フィルムが回転するときだけヒーターが作動し、フィルムを介してトナーに熱を与えて画像を定着させます。この機構で待機に必要な電力が不要になり、製品によっては定着ユニットの待機時消費電力ゼロを実現しました。

カラーオンデマンド定着方式のしくみ

カラー機では「カラーオンデマンド定着方式」を開発。定着ベルトは、白黒用定着フィルムの基層と表層の間にゴム層を挟んだ3層構造。柔らかいゴム層でトナーの定着性を高めます。基層は樹脂と金属の2種類があり、製品毎に使い分けることで、さまざまなニーズに対応することが可能となっています。

IH定着技術

IH定着方式のしくみ

「IH※5定着方式」には薄肉金属パイプの表面を表層で薄く覆った定着ローラーを使用しています。内蔵コイルに高周波電流を流し、誘導加熱によってローラー自体を発熱させます。自己発熱ローラーは熱変化するため耐久性に課題があります。キヤノンは、材料の熱特性や機械特性を検討し、ローラーの保持方法や定着器の構造を改良して高耐久の定着ローラーを完成させました。また、低損失高周波インバーター電源の開発により、安定した温度制御も実現しています。この方式により、待機時間は1/10(当社比)、従来比で約55%(当社比)の省エネルギーが達成されています。

  • ※5
    IH(Induction Heating)
    家電の炊飯器や電磁調理器に代表される電磁誘導を利用した加熱方式。

トナーカートリッジリサイクル技術 [いかす]

埋立てをしない再資源化を達成

分別技術により仕分けられた素材

キヤノンは、トナーカートリッジの破砕から材料分別、プラスチックのペレット※6化までを自動で行う材料再生プラントを、2002年に業界で初めて導入しました。トナーカートリッジの外装の主材料であるプラスチックは、色彩や比重などを利用したさまざまな方法により高精度に分別、ペレット化された後、再び新品のトナーカートリッジに使用可能となります。

こうしたプラスチックを半永久的に活用するクローズドループリサイクルをキヤノンでは推進しています。一方、破砕・分別された金属類も他用途への利用が可能となり、埋立てをせず再資源化を行っています。

  • ※6
    ペレット:粒状の塊のこと。

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