イブン・アル=ハイサム 光の屈折を実験で解明した科学者

「近代光学の父」と呼ばれたイブン・アル=ハイサム

みなさんは「科学者」というと、誰を想像しますか?
ニュートンでしょうか。アインシュタインでしょうか。いずれにせよ、みなさんの知る科学者の多くは欧米人だと思います。

しかし、光の科学の歴史をふりかえると、欧米以外の地域で生まれ、「近代光学の父」と呼ばれるほど大きな功績を残した科学者がいます。それは、イブン・アル=ハイサム(965〜1040年)です。

彼は、今から1000年近く前、イラクのバスラで生まれ、エジプトのカイロにて、光をはじめとするさまざまな事を研究した偉大な科学者です。

イブン・アル=ハイサム

イブン・アル=ハイサム(965〜1040年頃)

光が曲がることを実験で初めて解明したイブン・アル=ハイサム

イブン・アル=ハイサムは、図のような実験装置を作って、光の屈折をくわしく調べました。円盤の縁に銅板を取り付けて、光がどれだけ屈折したか角度を測れる装置です。

イブン・アル=ハイサムは、いろんな角度で光を水に差し込んで、光が屈折した角度を正確に調べました。この実験結果をもとに、彼は入射角と屈折角の関係や、光の通るコースについての原理を考えました。

つまり、実験によって事実を集め、事実から推論して、原理を求めたのです。これは、現代の科学と同じ手法です。

イブン・アル=ハイサムは、鏡やレンズについても実験を行い、光の屈折や反射の原理をいくつも見つけました。

また、ユークリッドたちが唱えた「眼から発する放射物によって物が見える」とは反対の立場に立ち、物の放つ光を受けて眼の中に像が結ばれると考えました。つまり、物が見える現象を解明した最初の科学者でもあります。

やがて、彼は光についての研究をアラビア語の書物『光学の書』にまとめます。この書物は、後にヨーロッパに伝えられて『光学宝典』と呼ばれ、彼の科学的な研究方法は、ヨーロッパ人に大きな影響を与えました。

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イブン・アル=ハイサムが行った実験の解説図

光が水に入ると屈折する実験の様子

参考文献:ダンネマン『新訳 大自然科学史3』

失われてしまった「科学の宝典」

イブン・アル=ハイサムは、眼球のしくみやピンホールカメラ、さらには、数学、天文学、医学、哲学についても研究し、生涯に200冊以上の書物を書きました。

しかし残念なことに、それらはすべて失われてしまい、現在は残っていません。先ほど紹介した『光学の書』も、アラビア語の原典は失われ、ラテン語に翻訳したものが残っているだけです。

イブン・アル=ハイサムが書いたたくさんの書物がきちんと保存され、現代の私たちが読むことができたら、どんなに素晴らしいことでしょう。きっと、「科学の宝典」として、いろんなことを私たちに教えてくれたはずです。

2012年現在、イブン・アル=ハイサムの姿は、彼の祖国・イラクの1万ディナール紙幣にも印刷されています。

『光学宝典』

『光学宝典』

光の科学者たち

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