新たな診断方法を切り拓く 医用イメージング

人体を傷つけることなく内部の断層像や3次元像を得られる、現在の医療現場では必須の医療画像診断装置。長年蓄積してきたイメージング技術を駆使し、キヤノンは次世代の医療分野において新たな価値を生み出しはじめています。眼病の進行を高精度に診断し、治療効果の確認に役立つと期待される「補償光学走査型レーザー検眼鏡」、無被ばくで検査時の痛みが少なく、より正確かつ早期の乳がん発見をめざす「光超音波マンモグラフィ」もその重要な研究・開発分野です。人々のコミュニケーションから健やかな生活にまで役立つイメージングへ。今、キヤノンの技術は、医療分野を支える大切なミッションを果たそうとしています。

眼底を細胞レベルで観察できる 補償光学走査型レーザー検眼鏡

視細胞の一つひとつ白血球の動きを可視化

AO-SLOによる眼底撮像画像

キヤノンの医用イメージング技術は眼科分野において、新しい検査機器の開発にも用いられています。キヤノンが京都大学と共同で開発中の補償光学走査型レーザー検眼鏡(AO-SLO)は、眼病診断に欠かせない眼底検査のレベルを飛躍的に高めるものです。

網膜症などの目の病気は、遺伝や加齢だけでなく、糖尿病などを要因としても発生します。目の病気で視力が低下したり、視力を失う可能性もあるため、他の病気と同様に早期に異常を発見することが欠かせません。

また、眼底は人体のなかで血管の状態を直接観察できる唯一の場所です。そのため、眼底の状態をみることで眼の病気だけではなく、高血圧症や動脈硬化などの病気が眼底にどのように影響を与えるかという知見を得ることができる可能性があり、現在研究が進められています。

眼底の異常を早期に発見するためには、視細胞レベルの分解能をもつ検眼鏡が求められます。キヤノンの強みである光学技術と画像処理技術に代表されるイメージング技術により、5μm(ミクロン)程度の分解能をもつ細密な動画像を得ることができるようになりました。その結果、視細胞の一つひとつ、さらに眼底血管中を流れる白血球の動きまでをつぶさに観察できるようになったのです。多くの医療関係者が期待する次世代眼科検査機器が生まれようとしています。

眼の病気やその他の疾病の早期発見に貢献するイメージング技術

AO-SLOの技術は大きく分けて、レーザー・ミラー・レンズなどから構成される検眼鏡システムと、波面センサーや波面補正デバイスを使ったAO制御システム、そして得られた眼底画像を解析処理する画像解析システムとからなります。

視細胞レベルの鮮明な画像を得るためには、いくつかの大きなハードルがあります。その一つが、眼の収差です。収差とは、レンズによって像ができるときに発生するボケや歪みのこと。レンズとしての眼には収差があるため、検眼鏡で外側から観察するとき、どうしても得られる画像に歪みが生じます。また、眼の収差には個人差があり、さらに検査中の眼の状態に応じて変化するので、それらに対応する精密な補正技術が必要になります。この技術を補償光学(Adaptive Optics=AO)と言い、キヤノンは収差をセンサーで測定し、波面補正デバイスを制御して高速に収差を補正するAO制御システムを構築し、走査型レーザー検眼鏡(Scanning LASER Ophthalmoscope=SLO)に組み込みました。

また、AO-SLOで得られた画像を解析するシステムの開発にも取り組んでいます。視細胞や毛細血管の動画像に対して、撮影中の被験者の眼の揺れから発生する画像のブレや歪みを検知/補正し、視細胞の数をカウントする視細胞解析や毛細血管を流れる血流の速度を計測する血流解析につなげていきます。

現在の装置は試作の段階にあり、国内外の大学・医療系研究機関との間で共同研究が進められています。近年は、AO-SLOで得られた画像解析結果と病態の関連性を特定し、画像診断としての有用性を実証する国際学会での発表例も増えてきました。キヤノンはこうした臨床研究の蓄積により、医療現場への導入が進み、眼の病気やその他の疾病の早期発見に貢献することをめざしていきます。

AO-SLOのしくみ

血管に光を当てがん細胞の状態を把握する 光超音波マンモグラフィ

光と超音波によってがんの新生血管の状態を可視化

光超音波イメージングシステムの概念

キヤノンは、乳がんの早期発見やがんの質的診断に貢献するため、これまで培ってきた技術を最先端の乳腺画像診断に活かそうとしています。

乳がんでは、早期にがんを発見できれば、高い率で治癒が可能となっています。がん細胞は増殖するにつれて、栄養を供給するために、組織の周囲に新生血管をつくることが知られています。したがって、がんの新生血管を可視化することができれば、早期発見につながるとともに、がんの質的状態の診断精度向上に役立てることができます。

がんのこの特徴に着目し、キヤノンはレーザー光と超音波を利用して新生血管の状態を可視化する装置「光超音波マンモグラフィ」を、京都大学と共同で開発しています。

近赤外光(パルスレーザー)を被検部に当てると、血液が光を吸収し熱膨張します。そのとき微かな超音波を発生します。この超音波をセンサーで検出し、3次元像画像に再構成することで、がんの新生血管の状態を可視化しようというわけです。

また急速に成長・増殖するがん組織は、酸素濃度が正常組織よりも低くなるため、がん組織の血液も同様に酸素濃度が低くなると考えられています。そこで複数の波長のレーザー光を用いることで、血液中のヘモグロビンの酸素濃度を測定し、代謝に関わるがんの良性・悪性を推定できる可能性があります。

先端医療への貢献をめざすキヤノンのイメージング技術

現在はプロトタイプ機を開発し、京都大学大学院医学研究科の医師に装置を提供することで、臨床研究を通して有用性を検証している段階です。

光超音波マンモグラフィが実現されれば、今日一般的な乳がん検査として普及しているX線マンモグラフィで課題とされている、被ばくや微小石灰化病変が映りにくいという点を補完することができ、また、血液の酸素濃度といった乳がん特有の性状の情報を提供することで、化学療法の早期効果評価への期待もあります。

キヤノンは、その強みである光学技術と画像処理技術に代表されるイメージング技術と画期的な装置開発を通して、がん医療の最前線で奮闘する医療従事者や患者様とそのご家族をサポートし、先端医療への貢献をめざしていきます。