イメージング開拓史 ~長年にわたる技術開拓の歩み~デジタルシフトなど多様化していく技術を牽引

大きな可能性を信じて開発に成功したCMOSセンサー

1987年、まだカメラがアナログだった時代、キヤノン初のAF一眼レフカメラEOS650のフォーカスセンサー用に、バイポーラ型増幅センサーBASISを開発しました。このセンサーの可能性に気づいた技術者はこれを詳細に分析、昇華させます。これがCMOSセンサーの始まりです。

その後、2000年発売予定のデジタル一眼レフカメラの撮像素子として、自社開発のCMOSセンサーを採用することが決定。当時、高画質と高感度が求められるデジタル一眼レフカメラの撮像素子はCCDが主流であり、CMOSセンサーを搭載することは画期的でした。

CMOSセンサーは、一般的にCCDと比較して低消費電力、速い読み出しスピード、低コストという利点がある一方、当時はまだまだ感度が悪く、ノイズが多いという欠点が指摘されていました。この欠点を克服するため、製造上の工程すべてを洗い出し、4トランジスター構成画素と相関2重サンプリングノイズ除去方式を開発。ノイズの低減に成功します。

一方で、通常のコンピューターやメモリー素子に比べて、リーク電流で1000分の1程度のクリーンなトランジスターをつくる必要がありました。リークの原因は製造工程における重金属汚染とシリコン結晶構造の乱れでしたが、徹底したクリーン化技術と金属汚染を除去するプロセス技術を確立。ようやくEOS D30の発売にこぎ着けました。

フルHDデジタルビデオカメラ用CMOSセンサー

今では、CMOSセンサーは35mmフルサイズで36×24mmという大型の半導体素子となりました。5,000万画素を超えるCMOSセンサーがデジタル一眼レフカメラに搭載され、さらに2億5,000万画素のCMOSセンサーの開発にも成功しました。また、フルハイビジョンビデオ動画をとらえる数ミリ角の微小サイズのデジタルビデオカメラ用CMOSセンサーにまで発展しています。

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独走し続ける映像エンジン DIGIC

映像エンジン DIGIC 6

レンズと撮像センサーでとらえた被写体の美しさを損なうことなく、デジタル映像に変換する役割を担っているのが、画像処理プロセッサーです。いわゆるデジタルカメラの高画質・高性能をつかさどる頭脳に相当します。1990年代中ごろ、他社のデジタルカメラはマイクロコンピューターで画像処理を行うものが一般的で、その処理には1枚撮影するごとに何秒もかかっていました。キヤノンでは、当初ビデオカメラに使われていたビデオ信号処理LSIに新しいLSIを加えて製品に搭載していましたが、開発負荷などさまざまな問題がありました。そこで1996年、まだ具体的なデジタルカメラの製品企画もない段階において、画像処理を1チップのシステムLSIで行おうというプロジェクトがスタート。汎用画像処理に適した独自のアーキテクチャーを採用し、1999年、最初の画像処理プロセッサーが製品に搭載されました。そして2002年秋、3代目の画像処理プロセッサーがDIGICと命名されて誕生しました。DIGICの主な特徴は、高性能・高速な画像処理能力と優れたノイズリダクションテクノロジーです。膨大な演算量のアルゴリズムをコンパクトにハード化し実行することでノイズを的確に除去・抑制し、高感度撮影時に発生する画像ノイズを低減し、高精細ですっきりしたキレイな画質を実現します。2013年に登場したDIGIC 6は、光学補正と電子補正の連携による「5軸手ブレ補正」や「60pフルハイビジョン動画」、動画・静止画のあらゆる撮影で大きく進化した「ノイズリダクション性能」、さらに高速化したオートフォーカスなどを実現し、動画性能を飛躍的に向上した最新鋭の画像処理プロセッサーです。

プロジェクターの高画質化と小型化に貢献するAISYS

2004年、キヤノンはプロジェクターに新たな光学技術を投入しました。従来多くのプロジェクターに採用されていた透過型液晶パネルには、画素の間にある駆動素子により投写画像に格子状のグリッドが映ってしまうという欠点がありました。そこで、画質を重視するキヤノンは、画素間がシームレスで高解像度化に適した反射型液晶パネルLCOS(Liquid Crystal On Silicon)を採用しました。

LCOSを使う場合の難点は、明るさ・小型化とコントラストを両立することが難しいことです。キヤノンはこの課題の解決に挑み、LCOSに当てる光に対して縦方向と横方向で異なる光学作用を与える独自の光学システム「AISYS(Aspectual Illumination System)」を誕生させました。

AISYSのイメージ図

2004年に開発した第1世代のAISYSでは、光源から光を収束させる際に光を縦方向と横方向で独立に制御することで、明るさを維持しながらコントラストをアップさせることに成功。同時に色分離合成系・投写レンズも新たに開発し、明るく高コントラストで階調性に優れたプロジェクターをコンパクトなサイズで実現しました。そして2006年には、照明の高効率化と画面照度の高品位化をめざし、第2世代のAISYSを開発。高輝度・高コントラストを両立した上で明るさのムラをなくすことに成功しました。

2008年に開発した第3世代のAISYSでは、フライアイレンズや演色性の高い光源ランプの採用などにより、照明光学系の小型化・低コストを実現しながら、クラス最高水準の高輝度を達成しました。さらに2011年には、第4世代のAISYSを開発。色分離合成系の小型化や光学設計の精緻化によって、光源から投写レンズまでの距離を大幅に短くする一方、輝度のさらなる向上も図られました。

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現実と仮想を融合するMR技術の開発

MR(Mixed Reality:複合現実感)」とは、現実世界と仮想世界をリアルタイムに違和感なく融合させる映像技術です。1993年、キヤノンは独自開発した自由曲面プリズムの特許を出願し、その約3年後に自由曲面プリズムを使ったHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を発表。

1997年には、キヤノンが発起人となり、通商産業省の基盤技術研究促進センターと共同で株式会社エム・アール・システム研究所を設立。約4年の研究期間を経過してエム・アール・システム研究所は解散し、2001年4月からはキヤノンがMR技術の研究開発を承継。2004年からは技術の方向性をAR技術に絞り、ものづくりへの適用をめざした応用開発に取り組んで来ました。

そして2012年6月、日本国内での発売を発表。同年7月より発売を開始しました。

近年製造業においては、製品のライフサイクルの短縮化が進み、製品をタイムリーに市場に投入することが求められています。設計時にMRシステムを活用することにより、試作回数を削減でき、開発期間の短縮に加えてコストや環境負荷の低減に貢献します。

また、用途に応じてカスタマイズしたMRシステム(ソリューション)を提供することでキヤノンはMR技術の多彩な分野での展開を検討していきます。

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