キヤノンでは自然保護活動の一環として「自然保護プログラム」を2006年から行っています。社員とその家族を対象に、NPOの協力のもと、東京近郊の自然観察・学習、調査、清掃活動などを行うものです。
2008年10月には、大田区・池上の本門寺公園でプログラムが開催されました。公園内には縄文時代から受け継がれたといわれる貴重な雑木林が広がっています。参加者たちは樹木や生物の観察、調査、どんぐり拾いなどを行いました。拾ったどんぐりはポットに植え、自宅に持ち帰って苗を育てることになりました。
2008年の自然保護プログラムにて。大きなどんぐりを見つけました
大人も真剣にどんぐりと向き合いました
本門寺公園でのどんぐり拾いから1年。社員の育てている苗木も大きくなってきたことから、植樹をしようということになりました。大田区内で植樹のできる場所を探しましたが、なかなか見つかりません。
そこで、本門寺公園でお世話になったNPO 法人・地域パートナーシップ支援センターに相談したところ、出会ったのが「うるおいの森プロジェクト」でした。
「うるおいの森プロジェクト」は「東京湾にカブトムシの育つような森、海岸の森をみんなでつくろう」をテーマに、地域パートナーシップ支援センターと若洲海浜公園(江東区)が協力して行っている植樹ボランティアです。そこに植えられているマテバシイやスダジイなどは、本門寺公園のどんぐりを育てたもの。縄文時代には海辺であった池上のどんぐりを再び海辺に帰してあげようという思いと、東久留米市からのクヌギで子どもたちがカブトムシと触れあえる公園にしたいという思いが結びついて生まれました。
このプロジェクトに私たちもぜひ参加させてもらおうということになり、2009年10月に、育てたどんぐりの苗を含め最初の植樹を行いました。
場所は、若洲海浜公園を囲むサイクリングロードの両側に広がる芝生の一角です。海の向こうには東京ディズニーリゾートや葛西臨海公園、少し歩けば東京ゲートブリッジも見えます。
参加者は社員とその家族、約30名。ほとんどの人が植樹は初めての体験でした。スコップで穴を掘り、ポットからはずした苗木を穴に植えていきます。地域パートナーシップ支援センターのみなさんの手ほどきを受け、子どもたちも親と一緒に、一生懸命、楽しみながら植えることができました。
初めて木を植えました
どんぐりの実の植え付けも行いました
- ●土壌が硬く、掘っていると手の皮がむけました。植樹の大変さ、地道な活動の大切さがわかりました。日常生活ではできない経験でした。
- ●植樹は、環境や生態系への影響をさまざまな角度から評価しながらの活動であることがわかりました。日本の森林問題は、適齢の木が使われず、森がメンテナンスされない点にあります。植えて終わりではなく、継続的に活動を続けることが大切だと思います。
- ●マンション住まいなので、子どもと土いじりをする機会もあまりありません。このような活動を通して自然と触れあえてよかったと思います。
- ●植樹だけでなく、いろいろな面白い体験ができました。大人があんなに一生懸命、どんぐりに穴をあける姿はなかなか見られないと思います。自然との触れあいを通じて、子どもたちも初対面ながら打ち解けることができました。
秋の山林にはたくさんのどんぐりが落ちていますが、どんぐりのなる木についてご存じですか?
「どんぐり」とは、ブナ科の木の実の総称です。日本には、ブナ、クヌギ、コナラ、マテバシイ、カシのなかまなど、約20種類の木があります。クヌギやコナラの幹からは樹液がしみ出ていることが多く、カブトムシやクワガタが好んで集まります。
公園内の芝生は、通常、定期的に刈り取られて一定の長さを保っています。もしも手入れをせず放置したらどうなるでしょうか。
1年もすれば芝は大人の膝丈を超す高さになり、あいだを縫うように、たくましい雑草たちも伸びてきます。こうなると、見た目は草ぼうぼうの荒れ地と変わりません。
植樹のために柵で囲った土地は芝刈りが行われないため、プログラム2年目からは植樹の前に草を刈って整地する作業が加わりました。
草の育つスピードは樹木よりも速いので、苗木は草に埋もれています。間違って苗木を刈ってしまわないよう、また苗木を踏みつぶさないよう慎重に、草だけを鎌で刈り取ります。また、幼木に絡みついている「つる植物」は、木の成長を妨げるため丁寧にほどいて取り除きます。
体力と根気のいる作業。それでも全員が力を合わせ、見違えるほどきれいになりました。
伸びきった草に幼木が埋もれています
刈り取った草を運ぶお手伝いです
- ●草と一緒に苗を抜きそうになり慌てましたが、20cm の苗の下には同じ長さの根が伸びていてそう簡単には抜けないことを聞き、小さい苗の力強さを知りました。(第2回参加者)
- ●去年は「お父さんが働く姿」を見るだけの参加だった子どもが、今回は刈り取った草を手にして運ぶことができるようになっていました。20cm ほどに成長した苗木とともに、うちの子の成長も垣間見ることができました。(第2回参加者)
- ●草を抜くのがこんなに大変なのか…つるをほどくのがこんなに大変なのか…。身をもって知りました。(第3回参加者)
- ●一人だったら嫌になるような作業も、皆さんと汗を流すとやりきれちゃうからすごい! 来年も成長を見に行きたいと思います。(第3回参加者)
植樹という体験を通して、私たちはたくさんの「初めて」に出会い、意識も大きく変わりました。樹木や森について知らないことの多さに驚いたり、生まれて初めて虫に触って大喜びの子どもがいたり。日常生活ではすぐに結果を求めてしまうことが多いなか、長い時間をかけて育む大切なことがあると実感しました。
参加者の中には「昨年植えた木が無事に育っているか気になってまた参加した」という人や、「子どもが本当に楽しみにしていた」という人、「自分でどんぐりから苗を育ててみたい」と蒔き方や育て方を熱心に教わっていた人もいました。自分の手で草を刈り、土を掘り、自然と向き合うことで、この小さな「未来の森」は一人ひとりにとって大切で特別な場所になっていきました。
貴重な体験が教えてくれたこの驚き、発見、喜びを、私たちはこれからも伝えていきたいと思います。そして、子どもたちが大人になり、彼らの子どもたちが大人になるころ、きっとここはカブトムシの育つ森になっている、そう信じて活動を続けていきます。
草刈りの後、きれいになったところに苗を植えます
どんぐりを植えて2年経ったクヌギの苗
クヌギは、多少は塩に強いとはいえ、もともと海辺の樹木ではありません。「こんなところに育つはずがないのでは」という意見もありましたが、初めから「できない」ではなく、挑戦する思いで植樹に取り組んでいます。 森づくりというのは、自然環境を保護する活動であるとともに、生きものに対するやさしさや、夢に向かってチャレンジする心を育てる活動でもあると考えています。
- ●植樹とは植えるだけだと思っていました。樹齢の違いによる大きさの違いを見ることができ、雑草刈りも体験でき、木はこうして育て・育っていくのだなということがよくわかりました。
- ●前年や一昨年に植えた苗と比較して、苗木の成長を実感できるのがうれしいですね。何十年も継続することで、人と森の両方が成長していく…少しずつでも継続することが何より大切だと思います。また、活動を広げていく努力を社員みんなでやっていけたらと思います。
- ●子どもたちに自然と触れあう体験をさせることができ、植物が成長するには非常に長い年月がかかるという命の大切さを教える良い機会となりました。
- ●木々の成長に関する話や、育て方、何に注意するかなどを聞けて勉強になりました。子どもたちも土に触ったり、土中の生物を見たりという貴重な体験ができました。このような、子どもを含めての社会貢献がこれからもできれば思っています。



