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子どもの頃の記憶が出発点
—おめでとうございます。優秀賞の一報を受けて、どういうご感想を持ちましたか?
応募したことで満足していたので、本当に信じられませんでした。作品が返ってきたらどう直そうかと思っていたぐらいです。日々、撮り続けていて、「コロニー」はその後50枚ぐらいたまっています。
—作品のコンセプトを教えていただけますか?
学校の卒業制作として、1年半ぐらい前から撮り始めていました。タイトルは家にあった動物図鑑から。図鑑を開けたら家族の誰かが「コロニー」という単語に鉛筆で印をつけていて、この言葉に惹かれてシリーズをまとめようと。コロニーとは生態学の用語で「繁殖のための群れ」という意味があるのですが、その群れの中で、息をしていたいと思う自分がいるように思えたんです。
私は3人姉妹の末っ子で、姉2人が仲よかったんですが、いつも私は置いてけぼり。飼っていたピッコロという柴犬に世話をされるように育った記憶があって、今でも特に大きな動物を見ると「親離れしたくない」という気持ちが出てきます。ひとつのコンプレックスですね。
—早稲田大学芸術学校空間映像科に入学して、写真を選ばれたのはなぜですか?
高校2年生のときに早稲田の映像ワークショップに参加し、教授の藪野健さんと准教授の佐藤洋一さんに出会ったことが決定的でした。早稲田のまわりで1分間の映像を撮ってくるという内容だったのですが、私の映像を「世界に羽ばたける」とすごく褒めてくださっ た。先生は私だけじゃなく、みんなに言っているんですが(笑)。
—ムービーで撮られた昔の映像を引用する発想はどこから得たのですか?
家には家族を撮ったビデオが1本しかないんです。それを約10年ぶりに見たときに、ピッコロがカメラに寄ってくる映像があって「懐かしいな」と思って何回もリピートしていたら、テープが傷んできたんです。何とか残しておきたいと、半べそをかきながら再生画面を撮ったのが最初でした。夜中にリビングのテレビに向かって三脚を立て、写真を撮っている自分の行為は痛々しいけれど、嫌いじゃないです。テレビ画面を、アナログカメラでバシャッと撮る行為自体も好きなんです。
ほかにも、姉が七五三のときの映像を撮ったりしています。姉ばかりが撮られるので、カメラの下に隠れて姉が撮られる瞬間に「わあ!」と出て邪魔したときのものです。当時の感覚や記憶が今でも残っているのですが、それを作品につなげて昇華させたい。
最近はビデオカメラで映像を撮り、それをテレビで再生したものを撮った写真も多いんです。たとえば、魔女の真似をして箒をまたぎながらジャンプをしているところを映像に撮り、ジャンプをする瞬間を静止して写真に撮るとか。このときは、小さい頃にジャンプばかりしていたことを思い出して撮りました。
写真を始める前の生活は、毎日が演技をしているような感じで、あまり思い出したくありません。急に落ち込んで学校をさぼったこともあります。でも、昔の映像や写真を複写していると、嫌いだった過去を笑いに変えられるような気がします。姉が映像に写るのを邪魔していた自分も、写真にしてみると、肯定できるような気がします。
自分を通して、社会の問題と関わりたい
—シリーズを作り始めて1年半の間に、作品はどう変わってきましたか?
初めはスナップ写真も混ざっていたんですが、複写したものが中心になってきて、最近はこのシリーズだけですね。両親の結婚式の映像も入っています。この作品を見て、入学以来今もお世話になっている鷹野隆大先生からは、「映画『呪怨』の世界だ。怖いね」と言われました(笑)。写真を選んでいるうちに、自分の中で物語が出てくるので、そのつながりで構成してみる。すごく単純な短編の物語をつなげて編集する感覚です。
—飯沢さんは高橋さんの作品を、自分の現在や未来を過去の映像から読み解いていくようなところがある。ただ、その未来がどう社会と結びついていくんだろう、とおっしゃっています。
学校は夜間の専門学校なので、大学生や社会人など、いろいろな年齢の人がいました。そういった人たちは、今の現実や社会の問題を自分の中で消化して作品を作ることができます。でもそういった経験のない私が「それは私には分からない」と開き直って遮断して作ったのがこの作品。そうすることで初めて積極的に外の世界と関われた、という意識が表れました。子ども時代のコンプレックスなどは、大きな問題ではないかもしれないけれど、社会の中で何人か、あるいは誰もが必ず抱えているはずなので、それを形にできればと思っています。
卒業制作展でこの作品を低い高さに展示したら、小さい女の子が写真に顔を近づけてすごく嬉しそうに観ていた。このシリーズは、子どもが見やすい位置に展示したいと思っています。

- 1988年11月20日茨城県生まれ
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2009年早稲田大学芸術学校空間映像科写真専攻卒業
