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本当の世界を感じたかった
—アメリカのどちらで育たれたのですか?
東海岸のマサチューセッツ州、ボストンです。教育に熱心な町です。みんな家を買うことや結婚することを目的に暮らしているようなところで、どこか虚像の世界みたいでした。それで、国を出て本当の世界を感じたいと思い、14年前に高校を卒業して1年間の世界を回る旅に出たんです。
—世界中を回ったのですか?
当時はどこまで飛んでもOK、というチケットをユナイテッド航空が20万円で売っていて、世界の4カ所を3カ月ずつ滞在する旅に出ました。働く代わりに食べるところを用意してくれる場所を見つけて。アラスカでは犬ぞりの犬の世話をし、南フランスでは絵を描くアーティストの手伝いをしました。それからネパールと日本。日本では北海道に行ったんですが、小樽から舞鶴へ30時間かかって行くフェリーの中で妻と出会いました。
—その後、ご結婚されたのですね。日本に来られたのはなぜですか?
世界一周の旅からアメリカに戻って音楽大学へ進んだんですが、日本で妻の家族とカラオケに行ったときに聞いた奥田民生の音楽が好きになったんです。日本で音楽をやりたいと思って2001年から住み始めました。途中で子どもが生まれたので、2005年にアメリカに一度戻って1年半後にまた日本に。
—写真を始めたきっかけは何だったのですか?
6~7年前からアクリル絵の具で絵を描いていたんですが、何カ月もかかって完成させるのに好きな絵ができなかった。それでモデルを呼んで写真を撮り、その写真を元に絵を描くようになったのですが、写真をPhotoshopで編集しているうちに、写真のおもしろさに惹かれたんです。プロになるには学校へ行かないといけないと思っていたら、アシスタントとして勉強しながら仕事ができることがわかった。それでコマーシャル写真のスタジオでアシスタントをするようになったんです。
アイデンティティをテーマに
—アシスタントを始めた2007年に、ミオ写真奨励賞で審査員特別賞を受賞されています。これはどんな作品ですか?
「私が日本人になった場合」というセルフポートレートです。日本に住んでいると、自分のアイデンティティについて考えてしまう。白人ばかりの街で育ったのに、日本に来ると自分がマイノリティとして特別な存在になる。外見でいろいろ思われるのがおもしろいと思って、女子高生や自転車に乗ったおばちゃんの格好をしました。
—今回の「1/2」(ハーフ)という作品は、どういう人をお撮りになったのですか?
家族だけです。妹や妹の子供、父と母、それに自分の子供とか。実家の家族は去年のクリスマスにアメリカへ戻ったときに撮りました。顔をPhotoshopで崩しているので、そういうことをしても許してくれるのは家族だけかなと思うから。ハーフというテーマが出てきたのは、自分の子供がアメリカ人と日本人のハーフだから。それに、写真を加工するので、デジタルとアナログのハーフでもある。タイトルには、いろいろな意味のハーフが入っています。
—なぜ、このように顔を崩したのですか?
以前から、Photoshopで写真をいじることはやっていたんですが、カメラマンの仕事を始めたら写真らしさを残したいと思うようになった。写真は絵と違い、撮った瞬間があって、ゼロからではなく作ることができる。まず何枚も撮って、一番その人らしさが出ているような写真を選ぶ。それから写真の顔をつぶす。でも、元の写真の要素はけっこう残っている作品なんですよ。つまり、問題にしているのはアイデンティティの問題です。ストレートな写真だと、外国人だとか、年齢とか、インテリっぽいとか、いろいろ見えてしまう。それを、これは誰だろうという謎のものを作りたかったんです。
—印象的なのは眼の部分だと思いますが。
眼を触らなかったら、抽象的じゃなくなってしまう。ポートレートを見たとき、もっとも視線が行くのは眼の部分です。だから、ある程度眼をつぶして、人間だけど人間っぽくなく。
—南條さんが、「人のポートレートではなく、普遍的な存在としての人間を描こうとしている」と評価していらっしゃいました。この作品は、どのように展示されるのですか?
画面で見たらきれいだと思うんですよ。だから、モニターとプリントアウトと一緒に展示したい。プリントは大きく引き伸ばして、僕が使える5メートルの壁面全部を使うつもりです。大きくするとインパクトが違う。展示をするときは、インスタレーションみたいな感じで。わざわざ美術館に来た人に、何かを経験してもらいたいと思っています。

- 1977年5月9日米国・ボストン生まれ
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2001年ニューイングランド音楽院
(New England Conservatory of Music)を卒業し、
大阪で暮らし始める -
2007年スタジオでカメラアシスタントを始める
ミオ写真奨励賞2007 審査員特別賞(選考:平木 収) -
2009年フリーのカメラマンとなる
個展
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2006年Elise Mankes Studio, ボストン, マサチューセッツ州, 米国
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2006年119 Gallery, ロウエル, マサチューセッツ州, 米国
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2006年Yellow Trailer Art Gallery, チェルシー, NY, 米国
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2007年ビーツギャラリー, 大阪
