写真新世紀東京展2010 公開審査会開催報告
公開審査会 2010年11月19日(金)
2010年度(第33回公募)グランプリ選出公開審査会が、11月19日(金)に東京都写真美術館1階ホールにて行われました。優秀賞を受賞しグランプリ 候補となったのは、齋藤陽道氏、佐藤華連氏、柴田寿美氏、高木考一氏、谷口育美氏の5名。候補者全員のプレゼンテーション、審査員との質疑が行われた後、 審査員による合議によって佐藤華連氏がグランプリに決定しました。



第33回公募 審査総評
大森 克己(おおもり・かつみ)
映画を見たりデートをしたり、誰もがふだん、いろんな体験をしているだろうけど、それより断然すごいなと思える作品を見たかった。「ああ、こんな世界があるんだ」と写真で示してほしいと期待していました。そういうものはなかなか見つからなかったというのが正直なところです。動画投稿サイトのYouTubeってありますよね。あれを見ているのと同じような気分になってしまう作品がちょっと目立ったかな。よく編集されてはいるけど、だれかが整えたフォーマットに疑いもなく乗っていて、どこかで目にしたことのあるようなものだったりする。「きれいにまとめよう」「ほどよいところに落とし込もう」という気持ちが強いんですかね。とくにブック形式の応募作品はそういう傾向が目立ちます。優秀賞に選んだ作品は、まとまりなんて気にせずジャンジャン撮っている感じが伝わってきてよかったです。世の中の流れを反映して貧乏くさくなるより、ゴージャスなものをもっとたくさん見たいなと思いますね。
佐内 正史(さない・まさふみ)
いったん見終わってから、もう一回もっとよく見てみようと思ってページをめくりたくなるとか、その作品が置いてあったところにわざわざ戻って見るとか、そういう写真があればいいかなと思って選んでいました。戻ってもう一回見てみると「閉じちゃう」ような作品もあるから、難しいところですけど。全体的には、もっとストイックなものとか、「これ、どうしようもないな」っていう写真があればと思ったんですけど、そういうのはなかなか探し出せなかった。そこそこきれいに仕上げている作品が多いんだなという感じ。整えて見せるか、少しも整えないかはどちらでもいいんですよ。でもそこが中途半端になっちゃったら、ずっと見ていたいと思える写真になるわけはない。応募してくる人は、「ここで勝負するんだ」っていうところを決めて、狙いを定めてきてほしい。こっちをバキバキにだましてやろうっていうくらいの気持ちで出してくるといいんじゃないですか。
椹木 野衣(さわらぎ・のい)
写真のコンペですから、ここには写真作品しかないわけですね。それでも絵画、彫刻、インスタレーションなど何でもありの美術のコンペと比較しても、かえって表現の多様性を感じました。写真でなければ駄目だというのではなく、自分がやりたいことを実現するために写真を選択している人が多いのかなという印象です。つまり、写真を撮ることが目的化しているのではなく、自分の表現のために写真を選び取っている。そこは肯定的に受け取りました。新しい動きというのは、案外そういうところから生まれるものではないかと感じるからです。審査の際には、あれこれ考えて言語化したりはせず、ひたすら無意識的に見て感じ、心の奥底にあるアンテナに引っかかったものを選ぶようにしました。そのほうが、現状の判断基準や枠組みに捉われないものを見つけられるのではないかと思ったので。反面、写真であることに寄り掛かるような表現には魅力を感じませんでした。写真の可能性だけではなく、芸術そのものの器を拡げてくれるような志向が、結果的に写真の未来をつくり出していくのではないでしょうか。
清水 穣(しみず・みのる)
応募作品を見渡すと、流行のようなものがはっきり見受けられますが、基本的には、どれもとてもうまいと思いました。審査にあたっては、作品を3つの「ふるい」にかけて選んでいきました。まず、いくら前回のグランプリが恋人を撮ったものだったからといって、身近な一人の人物を撮り続ける作品が多すぎる。思い込みだけを見せつけられても困るのです。次に、淡いコントラストでフワッともやがかかって、乳白色の世界を演出した写真、つまり生命保険のCM的色味の作品は通俗です。さらには、日常をデジタルカメラで切り取って、それなりに面白い構図にしただけの作品もよくない。日常やデジタルがいけないのではなくて、目を向けるところがみな同じなのです。洗濯物とか、路上の小動物の屍骸、降ってくる雪などが頻出する。これは自分の目でものを見ていない証拠です。結局消去法で、これらに当てはまらない作品から選んでいきました。新しい現象もありましたね。今はデジタル技術が進展して、動画と静止画の区別がなくなってきた、そんな時代に、どういう写真を撮るかを考えた作品が、いくつか見つかりました。
蜷川 実花(にながわ・みか)
「いい写真」って何なのか。それを定義するのは難しいです。審査をしていて、基準をどこに置けばいいか考えさせられました。とはいっても、写真を見るときにはまず自分の考えや好みに照らしていくのが当然。だから今回は、徹底して個人的な視点で作品を選びました。終えてみて、私はやっぱり素直でストレートな写真が好きだと改めて気づきました。「きれい」「うまい」「気持ちがまっすぐ伝わる」ものはやっぱりいい。単純すぎるかもしれないけれど、そういう当たり前のよさは積極的に認めたい。私が応募していた頃に比べれば、全体的に写真もまとめ方もぐっと上手になっていますしね。奇をてらったり、抜け穴を探しているような作品は選ぶ気になれませんでした。「新世紀」とタイトルにあるから、新しいことをしなければと考えてしまうんでしょうか。題材や手法が新奇なら新しい作品になるとはかぎりませんよ。それより私は純度の高さに惹かれますね。優秀賞は格好の例です。女子高生の学校ライフなんて目新しくないけど、純粋に研ぎ澄まされた当事者の視線が貫かれているからこそ面白かったんです。
