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写真で何ができるだろう?写真でしかできないことは何だろう?What can we do through photography? What is possible only through photography?

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写真新世紀東京展2008 公開審査会開催報告

公開審査会 2008年11月28日(金)

2008年度(第31回公募)のグランプリ選出公開審査会が11月28日に東京都写真美術館1階ホールで開催されました。審査会では、優秀賞を受賞しグランプリ候補となった岡部東京氏、小山航平氏、菅井健也氏、秦雅則氏、保谷綾乃氏、元木みゆき氏の6名がプレゼンテーションと審査員との質疑応答を行い、その後、審査員の合議により秦雅則氏がグランプリに決定しました。

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公開審査会&グランプリセレモニーレポートはこちら

第31回公募 審査総評
荒木 経惟(あらき・のぶよし)

写真は終わったのかもしれないと思ったね。全体的に、被写体に対して愛とかオマージュみたいなものが感じられないよね。自分のイマージュを出すのではなく、相手へのオマージュを出すのが写真なんだから。被写体との一体感がないというか、なんで被写体を美しく撮らないんだろう。
写真から作者の生身の感情が伝わってこないんだ。写真家と被写体の汗ばんだ関係性が消えているというか。といってクールでもないんだな。ちょっと冷たくて乾いているという感じだね。
これはデジタル写真の傾向だとも思う。デジタルになって、撮り方が変わったことがよく出ているよ。フィルム時代はカメラが写真家の目になるというか、カメラが写真家の顔と密着した時代だった。今のデジタルカメラはモノにすぎないからね。だから「終わった」っていったのは、世の中がデジタルに行っちゃって、わたしたちの世代が思っていた写真という表現がもう終わったって意味なんだよ。
ただ、これは悲しむことはじゃないかもしれない。そういう新しい時代が来たということで、写真新世紀が目指したものは、本当はこれなのかもしれない。この冷たくて乾いた写真が、これから熱くなっていくんじゃないかな。
あと、みんな作品をうまくまとめすぎてる。私は写真や構成のうまさより、ちょっとの思いつきの方を評価するね。これからズドーンといくような可能性を感じられるかどうかだね。

飯沢 耕太郎(いいざわ・こうたろう)

ここ数年、「写真新世紀はこんなものだろう」といった思い込みをもって応募してくる人が増えすぎた。そう感じていました。だから、今年は妙にまとまりのいい作品は、最終的に選から外しました。
基本的に、写真を作るのは現実世界をどう受けとめて、それを投げ返すエネルギーの問題だと思います。だから作品の完成度よりも「伸びしろ」というのか、この後に写真家として作品を展開するなかで、自分を伸ばせる可能性を持っているのかを評価の軸としました。そういった意味で、潜在的な可能性のある作品は多いように思います。
作品から共通して感じることは、みんなこの日本の社会のなかでもがき始めているなということ。そろそろこの閉塞的な状況をどうにかしたいと思っている。そういった怒りとか、激しい感情を内に秘めている作品が多いし、本気でそれに取り組んでいる人も少なからず登場している。表面的にはクールでも、社会や世界に真摯に取り組んでいる作品が多い。そこに、可能性があるように思いますね。
写真表現の世界的な傾向として、感情的な軋みとかをストレートなスナップ写真で表現する時代ではなくなっていて、自分の身体と現実の多義的な関係をテーマにした、新しい表現が出始めてきたようです。その片鱗が今回の応募作品からも見えました。

南條 史生(なんじょう・ふみお)

以前はスナップでストレートに撮った作品が多かったけれど、ファンタジー系というか、イマジネーションのなかで架空の世界を夢見るような作品が増えましたね。ストレートな作品と、「コンストラクティッド・フォト」のようにシュールレアリスティックな世界観を持った作品が拮抗してきた。そういった作品は仕上げも良くて、構成的な緊張感もあります。全体的に見て、成熟してきたという印象を持ちました。
一方でスクラブルと言うか、わざと荒っぽい仕上げをしている作品もありましたが、それはそれで作者の意図がはっきり出ていて強かった。いずれにしろ、どういった意識で作品を仕上げるのかが重要になっている。
いま現代美術の世界では、写真を使った作品が非常に多い。現代美術としての写真作品は、サイズや額、展示方法やエディションも作家が厳密に指定し、物理的な存在価値を高めている。作品をコントロールすることに、作家としての生き方が表れてくるんです。
いま写真が社会に氾濫する時代になって、写真表現をすることの難しさを感じますね。つまり誰でも質の高い写真が簡単に撮れるなかで、写真で何ができるのか。強烈な個性やものの考えかたを持っていないと、作家として世に出て行けないような状況です。どうやって自分のアイデンティティを確立して、人と違うものを作っていくのか、そこが問われているんです。

榎本 了壱(えのもと・りょういち)

せめぎ合いつつも、凄い勢いで作品の内容が「写真」から「ヴィジュアル」へ、作り手が「写真家」から「フォトグラフィックアーティスト」に流れているように感じました。しかし、ヴィジュアルを作ることだけに重点をおくと、カメラを通して作り上げられた世界が後退していく寂しさがある。
そこで、写真の魅力とヴィジュアルの面白さのせめぎ合いのなかで、写真の魅力をどこまできちんと持っているのかが審査のポイントでした。それはリアルなモノがそこに写っているということです。端的にいえば、写真は生活や日常の風景を撮るのに向いている。そういった意味では、王道的なフォトドキュメントや荒木さん流の「私写真」もまだ元気ですね。
ただし絵画の歴史も、リアリズムを突き詰めた後に抽象に向かい、やがて絵画という概念自体が崩れていった。美術史に起こったこのような変化を、いま写真も辿っているのではないでしょうか。ですからもうひとつのポイントは、写真の歴史を塗り替え、現代美術にも通用する作家が登場してくるかどうか。可能性は感じましたが、正直にいって突き抜けた人はいませんでした。これから成熟する時期なんだと感じましたね。でもそれは当然で、教育の現場でもすごく先駆的なデジタル画像を教育できる指導者はいないんですよ。デジタル系の作家は自分で開拓しなければならない。今出てきている20代の人たちは、その開拓者となっていくでしょう。
ひとつ気になったのが、作品点数が多すぎる人が多いこと。さまざまな要素が混在して、何を見せたいのか分からない。とてもシンプルに、たとえば作品点数を6~7 点まで絞っても、作家としての資質は示せるはずです。

大森 克己(おおもり・かつみ)

応募点数の多さに圧倒されましたが、あるレベル以上の作品は、おのずから語りかけてくるものだと思いましたね。
全体的に完成度は高くて、「ソツがない」って感じです。ただ本当に必要で作ったのかは疑問なんですね。写真を撮るために撮った作品が多いように思いました。ぼくとしては、何かに出会った喜びが写っている作品をもっと見たかったですね。まず写真を目的としない生き方が前提としてあって、そのなかでどうしても写真を撮りたくて撮ったんだ、という動機が出発点であってほしいんです。多くの作品は写真新世紀のために編集されている、フォーマットされているという感じを受けました。必ずしも必然性があるとは思えなかったんです。
それに写真ってそのあり方が多様で、変幻自在だったりしますよね。そういうことをもっと考えた方が良い。例えば組み写真が多いわけですが、あえて一枚だけで勝負してもいいんじゃないかな。表現のアウトプットが写真じゃなくてもいいと思うし、写真をもっと利用していいんじゃないかと。これだけ写真が氾濫していると、まず新しいものなんてないんですよ。それでもやるんだったら、もっと意味を考えないといけないんですね。
いちばん肝心なのは、やはり喜びみたいなものが写真にあることだと思う。何かを発見したときに、「ああこうだったのか」ということですよね。それはプロであれ、アマチュアであれ写真家であれば同じだと思うんですが。

野口 里佳(のぐち・りか)

ここ数年の写真新世紀のことは知らなくて、あまり元気がないというような話も聞いていたのですが、今回、私はとてもパワーを感じましたね。楽しく見させてもらいました。
いま写真はデジタルになってきて、もっと変わってきているのかな、と想像していました。デジタルから写真を始めた人も確実にいて、その人たちが何をするのか見たいと思っていたんです。でも最終的にはデジタルとアナログの違いを、それほど感じませんでしたね。
私が作品を選んだ基準はふたつありました。ひとつは私が思いつかないような表現。もうひとつは私が興味を感じているもの、共感するものがどう違う形で表現されるのか。その中で決め手になったのは、見たことのないものを見た衝撃ですね。
暗いモノを扱った作品や自分の中のつぶやきみたいな作品も多いですね。昔もそういう傾向の作品はあったと思うのですが、時代の影響からか、なんとなく内にこもるような傾向があるのでしょうか。
でもだからといって無理矢理ポジティブになれというのも違うと思うんです。どこにも行けない閉塞的な空気というのは、いつの時代にもあったと思うんです。私が写真を始めたときもバブルがはじけた後で、行きたいところに行けないという空気がありました。現在の、社会の暗さのなかから、何か新しい表現が生まれてくるのではないでしょうか。

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