![]()
「二重性活」
被写体になってくれた奈々子さんは体が男で心は女。それは、親にも妻にも同僚にも言えない秘密でした。
好奇心のままにカメラを向ける私に対し、奈々子さんは惜しむことなく自分をさらけ出してくれました。私はレンズを通して彼女の67年間の二重「性」活を見たのです。そして彼女が持つ女性へのピュアな憧れや幻想は、女である私に本来女性の持つ美しさや奥深さを教えてくれました。
「私は八方美人で欲張りなの。だからこういう生き方になったのよ」と彼女は言います。
家族を傷つけたくない、社会の中で普通の暮らしをしたい、だけど女でありたい・・・あらゆる制約に縛り付けられながらも奔放に人生を謳歌する奈々子さんは性別を超越した魅力を放っていました。私はそんな奈々子さんに夢中になったのです。
人は自分の存在の意義を他人の意識の中に求めるのかもしれません。彼女の願いは「世間から女であると認められたい」という事です。その気持ちが抑えきれなくなったとき、この写真達に新しい意味が生まれ、動き出しました。
これは写真を使った人生のカミングアウトです。この作品が奈々子さんの人生により大きな幸福をもたらすことを願います。
1982年6月2日 東京都生まれ。2005年3月 大妻女子大学家政学部 卒業。2005年4月 銀行へ就職。 2006年8月 銀行を退職。フリーランスのフォトグラファーとして活動を始める。
審査評 選:荒木 経惟
写真としての力もあるけど、何よりも被写体の存在感が抜群なんですよ。こんな父ちゃんとなら、一緒にビールを飲みたくなるでしょう。
これぐらいに濃い人生を写してこそ、ぐっと迫ってくるものになるんです。こういう写真を見ていたら、別に最近の流行がどうしたこうしたなんてことは、関係なくなってしまう。やっぱり、自分の目の前にあるコトやモノをちゃんと見つめる。それしか方法なんてないことがよく分かりますよ。
ただ、ブックの中には、つまらない写真もけっこう混ざっていると思う。そのあたりで、せっかくの勢いが削がれちゃっています。余計なものは思いきって取り払って、ちゃんと相手と向き合った写真だけを、できるだけ大きく引き伸ばして見てみたいという気がしますよ。



