インタビュー - Interviews -

長洲 未来選手
インタビュー

挑戦的なプログラムで自分を高められたシーズン
経験を強みに、2度目の五輪出場を目指す

日本人の両親のもと、アメリカで生まれ育った長洲未来(米国)。平昌五輪の会場で開催された四大陸選手権で銅メダルを獲得し、全米選手権の悔しさを今季最終戦で晴らした。長いキャリアを築いてきた彼女に、今季の収穫、2度目の五輪出場にかける思いを聞いた。

四大陸選手権で2年連続の表彰台「良いシーズンの締めくくりになった」
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四大陸選手権を終えていかがですか。良い結果だったと思います。

昨シーズンのこの大会の結果(2位)がとても良かったので、今回は自分自身への期待が大きかったのも確かです。ショート5位からフリーに臨むことになったのですが、それが良かったのかなと思います。プレッシャーを感じることがなかったので。去年同様(最終グループの)1番滑走だったのも良かった。今大会でフリーのパーソナルベストを出せてすごく満足しているので、良いシーズンの締めくくりになったと思います。

これが今シーズン最後の試合ですか。

そう、残念ですが。ナショナル(全米選手権)で良い滑りができず、世界選手権出場を逃してしまいました。次のシーズンに向かうには、今回の結果は理想的なものだったと思うし、出来にも満足しています。来シーズンも四大陸、そして願わくはオリンピック、ワールド(世界選手権)の切符を掴むためにも、次はナショナルでやるだけです。

2018年平昌五輪の試合会場で滑ってみて、どうでしたか?

大きな経験になりました。なんとしてもここに戻ってきたいと強く思えて、精神的な気づきがたくさんありました。氷のコンディションも素晴らしかったし、試運転としては会場もよく機能していたと思います。地元の組織委員会、オリンピック委員会、韓国連盟みんなの協力の成果だと思います。ここまでできているので、あと1年で運営がどれだけスムーズになっているか楽しみです。

今大会でパーソナルベストの演技ができたのは、なぜでしょうか。

これが今シーズン最後の試合だとわかっていたからだと思います。ナショナルで、競技シーズンにインパクトを残せるような良い滑りができなかったので、自分自身を見失ってしまっていました。今大会ではもちろん不安はありましたが、他の選手が抱えているであろうプレッシャーはなく、全体を通してただ自由に滑ることができました。シーズンの大半を終えていたので、私はもう次のシーズンに向かってここからスタートを切ろうと、ここを最初のステップにしようと考えていたんです。

14歳での全米タイトル獲得から来年で10年 「来シーズンは、できればトリプルアクセルも」
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2008年全米選手権で金メダルを獲ったときは弱冠14歳でした。当時を振り返ると、どんなことを思っていましたか。

当時もフィギュアスケートが大好きだったんですけど、でもその道のりも、プレッシャーも、スケートのネガティブな側面については、まったくもって理解していませんでした。それが全米で勝った途端に、それらがどんなに大切なことで、どれほど自分にとって重要かということに気づきました。そこから2年ぐらいは、それが自分ではどうしようもないほどになって、思うように滑ることができなくなっていきました。プレッシャーに埋もれていったんですね。ここ数シーズンは、自分を高めていくということができ始めています。プログラムは難しくて挑戦的なものなので、以前よりもやりがいを感じています。今回フリーで132点が出せたことにも満足です。これからもプログラムを向上させて、来シーズンは、できればトリプルアクセルもとり入れていきたいと考えています。

とても前向きですね。以前は才能あふれる少女スケーターでしたが、いまでは大人の成熟したスケーターになりました。

そうですね……。(ふぅ~と呼吸を整える)。この競技では、常に若いスケーターたちと戦っていかなければいけません。私は競技を続けていきたいと思っているので、そのことが自分自身を押し上げてくれている面もあります。でも同時に経験がちょっとした強みをもたらしてくれてもいるんです。たとえ何かがあって心が傷つけられようとも、今ではそれもありがたいことなんだと思えます。(笑)だって、私のスケートに可能性を与えてくれることなのですから。数年前と同じように変わらず滑っていきたいですね。

今季イタリアのカロリーナ・コストナー選手が競技に復帰しました。経験を重ねたスケーターたちについて、どう思っていますか。

カロリーナ・コストナー選手はもう30代になりますよね。それでもどんどん上手になっています。まだまだ滑る気持ちが強く見える。そういうスケーターたちを見ると、そこまで目指したいなという気持ちが強くなります。それから、ドイツのロビン・ゾルコーヴィ選手と滑っていたアリオナ・サフチェンコ選手。ペアで、もう30代に入っていますが、新しいパートナーと組んで、今でもクワドとかトリプルアクセルとかを跳んでいる。年齢は年齢なだけで、精神的に強ければ、誰でも努力すればできると思う気持ちが出てきました。14歳の私なら、今ここまで滑っているとは思わなかったと思うんですけど、今になってもまだまだ上手になれるなという気持ちが強いので、まだ続けたいと思っています。

そう思えるようになったのは、どうしてですか?

自分だけじゃないと思うんですけど、練習のときはやめたいとか、諦めたいとか思うんですよ。毎日転んだり、「できない」っていう気持ちが強い。でも、こういう試合を目指すために、また気持ちを立て直して、毎日プログラムを滑る。そういうトレーニングが好きなんです。試合では緊張感が強くなって、ストレスとか高いんですけど、ここでできたような演技をしたい。そういう気持ちをまだ経験したいんですよ。人生は短い。40代ごろにはもう絶対スケートはできないので、後悔しないように今続けたい。まだまだがんばれるなっていう気持ちが強いです。

デイヴィッド・ウィルソンとジェフリー・バトル 成長させてくれた2つのプログラム
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今回、特にフリー『The Winner Takes It All』の演技が素晴らしかったですが、デイヴィッド・ウィルソンにプログラムを振り付けてもらうのは、今回が初めてですか?

はい。今年デイヴィッド・ウィルソンに初めて振付してもらったんです。去年までは自分のスケートにあまり自信を持ってなかったので、リンクにいる振付の先生にプログラムを頼んでいました。でもやっぱり上にいきたかったら、トップの選手と一緒の振付の先生にお願いしないといけないなと思ったんです。去年世界選手権に行けたことで、自分に自信を持てるようになり、カナダに振付に行きたいという気持ちが強くなりました。「この音楽どうかな?」と提案されたときは、「もうこれじゃないと嫌です!」って。デイヴィッドとの仕事は本当に驚きでした。当然ですが、彼はすごくクリエイティブ。こんなに素晴らしいプログラムを作るのも、すんなりできたんです。ワールドクラスのコリオグラファーと仕事をするということが、いかに素晴らしいことかわかりましたね。創作に苦労がなくスケートに楽しみをもたらしてくれる、その経験が良いステップにもなるし、何より振付のプロセスを楽しむことができます。

では、ジェフリー・バトルはどうですか? ショートプログラムのショパン『夜想曲第20番』は、彼の振付ですよね。

とっても大好き! ジェフとの仕事は大好きです。人としても、彼の滑りも大好き。ずっと見て育ってきた人と一緒に仕事をするのは単純に楽しい! ジェフの場合は、自分と一緒に振付を作ってくれるような感じです。まだ引退からそう経っていないので、ステップを実際にやってみてくれる。彼がやりにくいものは、やっぱりいいものではない。彼はスケートのあらゆる面をよく理解しています。実際に才能あふれるジェフが動きをやって見せてくれると、私も自分に「もっとスケーティングスキルを向上させなくちゃ」と言い聞かせています。ジェフと仕事をするのが本当に大好きなんです。プログラムの手直しを一緒にするのも良いですね。彼は悪いところをはっきりと言ってくれるんです。それに良いところもきちんと伝えてくれます。2人で良いコンビネーションを発揮できたことで、こんなに美しいプログラムができた。ジェフとの振付を本当に楽しんでいます。

来シーズンのプログラムについては?

たぶんプログラムは継続して使うと思います。世界選手権で披露することはできませんでしたが、本当に強力なプログラムが2つできたと感じています。私には少し難しいものだったので、今シーズンはこのプログラムの魅力をすべて発揮することはできませんでした。可能性を全部見せ切れないまま、このプログラムたちを手放すことはしたくないと思っています。ここでのロングは良かったですが、もっとできると思う。そう感じているときは、手放したくないものなんです。もちろん最終的にはコーチと話して決めますが、いまの段階ではこのプログラムを楽しめていますし、続けて使いたいと思っています。

「一生忘れられない、魔法のような瞬間を」平昌五輪を目指して
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これまで色々な良いコーチと出会ってきたと思いますが、今コロラドスプリングスで、トム・ザカライセックコーチからはどんなことを学んでいますか。

トムからはスケートの構成や体系化を学んでいます。トムとの練習はある種、学校みたいな感じです。リンクへ行くとトムが練習予定表を持ってきてくれて、そのプランを実行していきます。プラン通りに滑っていくんですが、それが私には合っていたみたい。今日何をしなければいけないか、そのために何が必要かが一目でわかります。早く終わればそれだけ早く帰れるし。(笑)自分のスケジュールや、やるべきことを把握して遂行していく。今楽しんでやっています。全体のパッケージの完成に向けて、日々小さなステップを踏んでいっている感じですね。なので、より賢くなるためにたくさん勉強する学校みたいかな。トムとの練習は本当にうまくいっています。

今、大学に通っているそうですが、リンクで教えることもしているのですか。

ときどきだけですね。フルタイムの学生なので、スケートと学校だけで時間がありません。教えるのも大好きなんですけど。スケートだけをしているのは、それほど好きではないなと思うんです。スケートばかりになってしまうと手に負えなくなるので、段階を決めて練習することで生活や精神的なバランスを保っています。また他に目標を持つことも自分を落ち着かせる助けになるし、スケートに集中しすぎてストレスに感じることもありません。

大学の専攻は?

国際経済学です。今は会計学のコースと統計学をとっています。ほとんど数学なんですけど、数字はおもしろいです。とても教育的なもので、このコースを続けていきたいと思っています。

では、夢を教えてください。

疑いようもなく私の夢はずっと1つ、オリンピックにもう1度出ることです。その夢に向かって5歳のころから練習してきましたし、おそらく今度が私にとってはオリンピック代表チームに加わるラストチャンスです。なので、今年は少し練習も変わってくると思います。スケートにどうしても集中したいので、学校の時間を削ることになるかもしれない。私は夢を叶える女の子になりたいんです。もちろん夢を叶えられると信じる強い部分を持っていて、そしてもう1度チームに戻る、そんな女の子です。

初出場の2010年バンクーバー五輪では4位でしたね。覚えているのは、どんなことですか。

私にとって、初めてのオリンピックは、興奮や刺激、緊張、すべてが大きすぎるものでした。最終滑走を上手く滑って、試合を気持ちよく終えることはかなりの重圧でした。今は再び自分自身に挑戦して、あの時以上の魔法のような瞬間を生み出したいです。一生忘れられないような瞬間を。

2017年2月、四大陸選手権にて取材

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