インタビュー - Interviews -

ミハイル・コリヤダ選手
インタビュー

「4回転を何本も跳ぶ時代だからこそ
そのなかでも個性の光る選手になりたい」

文・野口美恵(スポーツライター)

昨季は世界選手権で4位と飛躍し、今季はロシア選手権で初優勝を決めたミハイル・コリヤダ選手。21歳で覚醒したロシアの新星が、今後の抱負を語った。

骨折で1年休養後、世界の4位に「まだプレッシャーは感じていない」
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昨季は世界選手権で4位と大活躍のシーズンでしたね。

昨季の世界選手権は、何度振り返っても嬉しい結果でした。僕は昨季まで、世界選手権のような高いレベルの選手が揃う大会に出たことがなかったので、練習の時間から全てのことが勉強になりました。トップ選手の練習する様子を見られただけでも収穫でしたが、自分自身としては練習してきたすべての力を発揮することができたので、とにかく最高の試合でした。

シニアに上がるはずだった2014−2015シーズンは、骨折のためにほぼ休養。昨季に一気にブレイクした形でしたね。

ケガは大変なことでしたが、その後にしっかりと技術は取り返しています。リハビリの間も、スケートを辞めようとは思いませんでした。実際に、ケガが治った直後に4回転を確実に跳べるようになりましたし、1年休んだことに悪いイメージはありません。

昨季に大飛躍しましたが、何かきっかけはありましたか?

僕としては、本当に普通に頑張っただけなんです。まだシニアに上がって間もないですし、練習して上手になったらそれを試合で発揮する、ということの繰り返しです。まだプレッシャーとかも感じる立場ではないですよ。

エフゲニー・プルシェンコ以来の天才とまで、国内では噂されています。

周囲からの期待は聞こえていますが、あまり自分では意識しないようにしています。まだ昨季の世界選手権で4位になったばかりですし、その順位を今季の世界選手権でも獲れるとは限りません。特に今、男子のレベルはとても高くなっていますから、去年と同じ演技をしても世界選手権で4位にはなれないでしょうし、逆に、世界選手権で表彰台を狙うにはどんな高いスコアを出せばいいのかもわかりません。なので、まずは順位や点数を意識せずに、着実に練習して自分自身をレベルアップするのみです。

NHK杯では4回転ルッツに挑戦「今季中に成功できると思う」
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今季はNHKに初出場。惜しくも5位でした。

普段の練習でやってきたことが、全然発揮できませんでした。それは仕方がないですし、全ての試合で最高の演技は無理なことなので、僕自身は気にしていません。でも初めての日本での試合だったので、日本の皆さんの前で力を発揮できなかったのは残念です。

日本でコリヤダ選手は人気があるので、ファンは皆、NHK杯での演技を楽しみにしていました。

日本にこんなに僕のファンがいることにびっくりしました。僕宛ての花やぬいぐるみ、雑貨など、たくさんのプレゼントが演技後に投げ込まれたんです。応援して下さったことには、とっても感謝しています。日本には初めて来たので、こんなに愛されているのが不思議なくらいです。もっと頑張ろうと思えましたし、次に日本に来る時が楽しみになりました。

初来日ということですが、日本の印象は?

日本は街がきれいだなというのが第一印象です。あとスケートに関しては、こんなに観客の応援が熱心で温かい手拍子もしてくれる国だということを知って、最高の演技ができる国だと思いました。ジャンプのミスはありましたが、観客に乗せられて踊ることができましたから、表現としては良いものができたと思いますよ。ただし今回のNHK杯は、4回転ルッツという新しい技を入れたばかりだったので、プログラム全体のバランスが崩れてミスが多かったと思います。また次に期待してください。

NHK杯では、4回転ルッツに初挑戦しましたね。

4回転ルッツの成功率はまだまだ低いです。実はNHK杯の2週間前に練習を始めたばかりでしたが試合で入れてみました。今シーズン中には成功できそうだな、という感覚です。(2016年12月のロシア選手権では転倒したものの)欧州選手権、世界選手権とまだまだ再挑戦のチャンスはあるので、どこかの試合では降りたいです。

4回転トウループの次に、なぜ、いきなり4回転ルッツを練習したのでしょうか?

今季の試合に出てみて、2種類目の4回転が必要なことはすぐにわかりました。なので11月のロシア杯が終わってすぐに、新しい4回転の練習を始めたんです。もちろん4回転サルコウもやってみましたが、4回転ルッツのほうが成功率は高かったので、こちらを試合で入れることにしました。

練習からわずか2週間で、試合で入れてみるというのは驚きです。

練習してすぐに4回転ルッツの感覚は良かったので、試合でもできるのではないかと思いました。コーチと相談して作戦は決めているので、無茶をした訳ではありませんよ。トップの選手はみなフリーで4回転を「2種類3本」という時代です。僕もまだゴールはわかりませんが、まずは今季中にフリーで3本入れるところまで持っていきたいです。

週4回のバレエが表現力の基礎 サーカス風の表現の特訓も
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コリヤダ選手は、4回転ジャンプの精度だけでなく、表現力が個性的なところが魅力ですね。

表現面に関しては、僕のチームが一番力を入れているところです。確かに4回転ジャンプは得点源としては大事なのですが、選手としての特徴を決定するのは、表現力だと思います。少なくとも、ジャンプだけの選手にはなりたくないので。表現面の練習にはかなり時間を割いています。

具体的にはどのような表現面の練習をするのでしょう?

普段は週4回のクラシックバレエがありますし、さらに自分のプログラムの振り付けをブラッシュアップするためにダンスの先生が来て、表情の作り方や、細かい身体の使い方などの練習もします。フリーの『ラ・ヌーバ』はシルク・ドゥ・ソレイユの曲なので、サーカス系の踊りです。そのためサーカス系のダンスコーチに来てもらって、特徴的な動きを習っています。最初は特別なレッスンが必要でしたし苦労しましたが、一度覚えてからは、滑るのがどんどん楽しくなってきました。

『ラ・ヌーバ』らしいファンタジーの世界観を見事に表現していると評判ですね。

気に入って頂けて嬉しいです。フリーの曲は僕の性格に近くて、とっても表現しやすいから評価も高いのだと思います。自分の性格は、陽気で楽しくて明るくて、誰とでも仲良くなれて、というキャラクターなので。そういうイメージの曲だと思います。特にステップに力を入れているプログラムなので、もっともっと練習して上手くなりたいです。

他にも滑ってみたい曲はありますか?

スケートの演技者としては、サーカスのような演技ばかりをしたい訳ではありません。今後はもっと広い表現の世界を考えています。普段からあらゆるジャンルの音楽を聴きますし、色々な舞台も観ています。クラシックも聴きますし、バレエも観ますし、他のミュージカルにも興味があります。色々な表現をできるようになるのが目標です。

「自分も観客も楽しめる演技こそがフィギュアスケートの魅力」
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平昌五輪にむけて、ロシア男子は激戦が予想されます。ライバルだと意識している選手はいますか?

誰がライバルか、という考え方はしていないです。もともと、他人と自分を比べる性分ではないんです。マキシム・コフトン選手はやっぱり4回転の能力が素晴らしいですし、セルゲイ・ボロノフ選手は安定感があります。アルトゥール・ドミトリエフ選手も才能があります。他の皆も凄い選手ばかりなので、この人がライバルということは言えません。それに僕はシニアの選手としてはまだまだスタートしたばかりで、世界にどんな選手がいるのかも意識していません。

あまり勝敗を気にする性格ではないのですね

子どもの頃は、勝敗も気にしていました。でも今の男子はとにかくレベルが高すぎて、ライバルを意識したり、誰かを真似したりしても、追い抜くことはできません。まずは自分の練習にしっかり取り組んで、試合での自分への評価をしっかり分析して、次の試合で少しでも成長できるよう繋げていこうと考えています。

では、コリヤダ選手自身はどんな選手になりたいですか?

やはり自分の個性がある選手です。とにかく勝敗だけがフィギュアスケートの目的という意識ではないんです。素晴らしいプログラムを踊って、自分も観客も楽しめることが、フィギュアスケートの魅力だと思いませんか? だだからロシア国内でも海外の試合でも、「コリヤダ選手らしい」と思われる個性を確立することが必要だと思っています。

今季の目標は?

まずは欧州選手権に選ばれて、ちゃんとした結果を残すことです。その上で世界選手権に出場して、練習の成果を発揮できれば良いと思います。

2018年平昌五輪にむけては?

とにかく五輪に出たいですし、五輪の場で良い演技をしたいです。まだまだメダルを狙うとか、順位を気にする状況ではありません。あと2シーズン、とにかくジャンプでも表現面でも自分の限界を決めずに、やれるだけのことをやる。結果として、五輪の場で最高の演技ができるなら、それは素晴らしいことですよね。とにかく成長し続けていくつもりなので、日本の皆さんの前で次に演技する日が楽しみです。

2016年11月、NHK杯にて取材

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