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羽生結弦、世界チャンピオンに返り咲く
宇野昌磨が銀メダル、日本男子ワンツーフィニッシュ

世界選手権2017が3月29日~4月2日にフィンランド・ヘルシンキで開催され、男子シングルは30日にショート、1日にフリーが行われた。3年ぶりの王座奪還を果たすかが注目された羽生結弦が、ショート5位から臨んだフリーで圧巻の演技を見せて逆転優勝、宇野昌磨が2位となり、日本勢がワンツーフィニッシュを果たす最高の結果となった。

羽生が圧巻の金メダル、宇野は銀メダル、日本の五輪出場枠は3に

総合300点台が4人。今回ほど高度な次元で争われた世界選手権は過去に類を見ない。そしてその頂点に立ったのは、やはりというべきか、日本の羽生結弦だった。ここ数年、スポーツとしてのフィギュアスケートを高いレベルに押し上げ続けてきた最大の立役者である羽生の、2013-2014シーズン以来3年ぶりの戴冠である。2連覇中のハビエル・フェルナンデス(スペイン)をはじめ優勝候補の選手たちがそれぞれの全力を発揮するなかで、その誰もが試合後に羽生への賞賛を口にした。誰もが納得する王者のカムバックに、会場は沸きに沸いた。

羽生にとって、今大会の鍵になったのはなんといっても「4回転サルコウ+3回転トウループ」のコンビネーションジャンプの成否だった。ここまでの大会では、ショートにおいてNHK杯とGPファイナルで成功して100点越えを果たす一方、フリーにおいては成功に至っていなかった。とくにフリーで成功すれば大きな得点源となり、『ホープ&レガシー』の演技の完成をもって優勝の2文字がぐんと近づく。

30日のショート。羽生は最終グループ1番目の滑走だった。『レッツゴー・クレイジー』の曲にのり、力みのないスケーティングを見せる。冒頭の4回転ループをシャープに決めたが、続く「4回転サルコウ+3回転トウループ」でミスが出て、98.39点で5位スタートとなる。演技開始の制限時間オーバーによる減点1もとられ、演技後に悔しそうな表情を見せた。

「非常に悔しいです。毎回毎回、今シーズンは悔しいばかり言っていますけど。本当になんでこんなにも経験が活かされないかなって、自分にすごく不甲斐ない気持ちでいっぱいです。」

そして迎えた1日のフリー。今回も最終グループの1番滑走。凛とした決意のこもる表情で滑り始めると、4回転ループ、4回転サルコウと冒頭のジャンプを綺麗に成功。そのまま美しいスピンに入っていく。そして中盤、懸案の「4回転サルコウ+3回転トウループ」を理想的な正確さで成功。4回転トウループも決めて4本の4回転をすべて成功させると、続く「トリプルアクセル+2回転トウループ」と「トリプルアクセル+1回転ループ+3回転サルコウ」も決めた。最後の3回転ルッツですべてのジャンプを完璧に揃えると、そこからはもう拍手が鳴り止まない。羽生が人差し指を天に向けて演技を終えると、観客席は爆発的な歓喜に包まれた。ジャンプの空中姿勢やスピンのポジションなど、まるで磁石が吸いつくように正しいフォームに入り、そのすべての要素を流麗なエッジワークと詩情あふれる表現でつなぎ合わせた羽生は、この演技でフィギュアスケートの美と理想を氷の上に現前させたと言っていいだろう。自身のフリー最高得点を更新する223.20点をマーク、総合321.59点でこの時点で優勝に王手をかける。この後、最終グループの選手たちはそれぞれ全力を尽くして演技を行ったが、いずれも羽生に届かず、羽生の優勝が決定した。

「スピードはもっと出せたかもしれないですけれども、これが自分のジャンプのため、演技のため、このプログラムすべての完成度のためにできる一番いいパターンだったんじゃないかなと思います。自分にとってはこのフリーが最高のご褒美だと思っています。今季は試合での演技はもちろんですが、やっぱり自分の限界を作らずに練習してこれたことが一番の収穫だと思っている。今日はジャンプ1本1本決めるごとに、徐々に徐々に自分が自然に入っていく感じがしました。」

一方、今回が世界選手権に2回目の出場になる宇野昌磨は、まずショートで2位につけてその存在感を再び世界にアピールした。最終グループの2番目、羽生の直後の滑走だ。代名詞である4回転フリップ、「4回転トウループ+3回転トウループ」、トリプルアクセルと質の高いジャンプを揃え、スピンやステップなどもレベル4を揃えて、104.86点と文句なしの結果。滑り終えて大きく片手を突き上げた。

「すごく気持ちよく滑ることができて、今年1年やってきたことがここで出せたのは嬉しかったです。」

フリーでも4回転ループ、4回転フリップに続いて、後半の4回転トウループ、「4回転トウループ+2回転トウループ」もしっかりと着氷。3回転ルッツで着氷が乱れたほかは、ほぼミスのない演技で、パフォーマンスとしても観客に訴えかける力強いエネルギッシュな表現で魅了した。高い技術点、9点台をずらりと揃えた演技構成点の両輪が揃い、フリーでシーズンベストの214.45点、総合で319.31点の高得点を獲得。見事に2位銀メダルを手にした。

「全員の選手の演技を見ていました。みんなノーミスしていて、プレッシャーになったかもしれないけど、でもやっぱり自分は自分と考えていたので、去年の失敗をしないよう楽しく滑れたらいいなという思いだった。むしろゆづくんのあれだけの点数、演技を見て、どんなことをしても勝てないな、という確信が生まれたので、開き直って自分のことをやろうと思いました。今できる自分の100パーセントが出せました。」

田中刑事はショートで冒頭の4回転サルコウを転倒し、73.45点で22位スタート。フリーでは、課題にしていた4回転サルコウを2本とも成功させる大健闘を見せた。148.89点を出し、総合222.34点で最終順位は19位。トリプルアクセルでは転倒を喫したが、世界選手権の緊張感の中である程度自分らしい演技ができたと胸を張った。

「4回転サルコウを(2本)決めて、波に乗って、フリーの持ち味である表現面を上げていこうという意識に変わっていきました。ショートで出遅れたので、フリーはやることをやるしかないという気持ちに切り替え、落ち着いてできました。良い経験になりました。」

日本勢は上位2人の成績の合計が3となり、平昌五輪での日本の出場枠を最大の3枠とした。

上位陣の熱い戦い、それぞれの強みを活かして激突した新鋭とベテラン

一方、各国の強豪スケーターたちも熱い戦いを見せた。

総合3位は、昨年に引き続く銅メダル獲得となった金博洋(中国)。自身が世界で初めて成功させた「4回転ルッツ+3回転トウループ」を今回も最大の得点源にしている彼は、この難しいコンビネーションをショートで成功させ、フリーでも4回転ルッツ、4回転サルコウ、「4回転トウループ+2回転トウループ」、4回転トウループと4本の4回転に加えて2本のトリプルアクセル、「3回転ルッツ+3回転トウループ」など後半でも得点を積み重ねて、落ち着いた演技で総合303.58点と自身初の300点の大台に乗った。「今回のフリーは僕のこれまでで最高の演技です」と話した。

今回、3連覇を目指したハビエル・フェルナンデス(スペイン)。ショートで109.05点の高得点を出し、強さを改めて感じさせる絶好のスタートを切った。25歳のディフェンディングチャンピオンは、フリーでは4回転サルコウを転倒、他にもジャンプにミスが出て完璧な演技とはならず、ハイレベルな最終グループの中でフリーだけなら192.14点で6位と後退。総合で301.19点とそれでも300点超えとなる成績を挙げたが、上位3選手に届かず4位となった。

「フィギュアスケートは大変なスポーツ。(今回の敗北について)五輪に向けて、ポジティブな面を見ていきたい。きっとプレッシャーが少し減ると思うよ。」

カナダのパトリック・チャンも、豊富な経験を活かした試合運びで見る者を感嘆させた。ショートでは今や彼のトレードマークとなったダイナミックな「4回転トウループ+3回転トウループ」をはじめ、3つのジャンプ要素をこれ以上ないような精度で成功させて、フェルナンデス、宇野に次ぐ3位で折り返す。フリーではトリプルアクセルや2本目の4回転トウループにミスが出てしまうなど、総合では5位となった。つねづね「いつも表彰台に乗る必要はない、そのすぐ近くまで迫っていればいい」と話している通り、五輪の大舞台を虎視眈々と狙う姿勢を改めて鮮明にしつつ、上位選手の活躍を讃えるベテランらしい余裕も見せていた。

今回、台風の目として注目を集めていた米国の17歳ネイサン・チェンは、フリーで4回転ジャンプを6本入れる驚異的な構成で臨んだ。ショートで苦手としているトリプルアクセルが決まらず6位スタート、フリーでは4回転ルッツ、4回転サルコウで2度の転倒を喫するなど、彼の最大のポテンシャルからは程遠い演技内容となってしまい、悔しさをにじませたが、「世界選手権は僕にとってまったく新しい経験で、最高だったし楽しかった」と大物ぶりも感じさせた。総合で6位。

米国のジェイソン・ブラウンは、ショートで4回転に挑まず、フリーでも4回転トウループで転倒したが、そのほかの要素はしっかりと成功させつつ彼の持ち味である芸術的なスケーティングで満場を虜にし、無二の個性を大舞台で発揮して総合7位に。この活躍でチェンの成績と合わせて、米国に五輪出場枠3をもたらした。このほか、4回転ルッツに挑戦し、テクニック面の強さを改めて見せたロシアのミハイル・コリヤダが8位、4回転ジャンパーとしての能力を取り戻したカナダのケビン・レイノルズが9位など、選手がそれぞれの能力を発揮する見ごたえのある試合が展開された。

男子の五輪出場枠は、日本3、米国3、カナダ2、ロシア2、スペイン2、中国2、イスラエル2、以下1枠がウズベキスタン、ジョージア、カザフスタン、ラトビア、オーストラリア、フランス、チェコ、ドイツに決定。

史上稀に見るハイレベルな戦いは、間違いなく平昌五輪の舞台で再現されることだろう。選手たちが怪我に悩まされることなく、アスリートの限界に挑む姿をみせてくれることを祈りたい。

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