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スポーツライター野口美恵のプレスルーム 大会のみどころ

平昌五輪につながるプロローグ
ジャンプも演技も、最大限の挑戦を

文・野口美恵(スポーツライター)

「世界選手権2017」が3月29~4月2日、ヘルシンキで開かれる。プレ五輪シーズンの世界王者・女王のタイトルは、五輪のメダル争いに臨む大きな自信となるだろう。また各国の五輪出場枠が決まる、4年間で最も重要な一戦でもある。各選手、各国の思惑が入り乱れ、大混戦が予想される。

五輪出場「3枠」をめぐる熾烈な争い
日本女子は6位が最低ライン

まず重要なのは、五輪出場枠争い。最大の「3枠」を獲得するためには上位2人の順位合計が「13以下」となる必要があり、「2枠」獲得には順位合計が「28以下」となる必要がある。つまり6位と7位ならば「3枠」獲得に成功する。また世界選手権への出場者が1人の国は、2位以上になれば「3枠」、10位以上になれば「2枠」獲得となる。

日本女子の場合、エースの宮原知子が疲労骨折のため欠場するなか、どう「6位」と「7位」以上に食い込むかが注目される。

今季の自己ベストを比較すると、三原舞依は四大陸選手権で200.85点をマーク。これは世界で5番目に高いスコアだ。また樋口新葉も今季のフランス杯で194.48点を出しており、これは世界9位。また本郷理華はまだ今季調子が上がっていないが、昨季マークした199.15点を出せれば、世界7位相当になる。

エースの欠場により3選手に均等に重圧がかかる状況だが、本郷は2015年世界選手権6位の経験を活かし、そして三原と樋口は初出場の勢いで駆け抜けることが、「日本女子3枠」のために重要になる。

一方、男子は羽生結弦、宇野昌磨の2人がGPファイナル、四大陸選手権ともに表彰台に乗っており、実力を発揮できれば「3枠」はほぼ確実だろう。

男子は4回転時代がさらにヒートアップ
羽生、宇野はフリーで「4本」へ

男子は昨季からの“4回転インフレ”のなか、各選手が4回転を「何種類、何本」跳ぶかが話題の中心になっている。

最も「種類・本数」が多いのは、ネイサン・チェン(米国)。4回転トウループ、サルコウ、フリップ、ルッツの4種類を跳び分ける。四大陸選手権2017では、ショートで2本、フリーで5本の「計7本」を降り、300点超えを果たした。

続いて、金博洋(中国)は4種類目の4回転に挑戦中。昨季の四大陸選手権では、ショート2本、フリー4本の「計6本」を成功させた。「フリーでの4本成功」は史上初に認定されている。今季後半戦は、調子次第では、「フリーで4種類5本」に挑戦する可能性もある。

次に羽生結弦、宇野昌磨が3種類を跳ぶ。羽生は4回転「トウループ、サルコウ、ループ」を、宇野は「トウループ、ループ、フリップ」のそれぞれ3種類を成功。2人とも、ショートで2本、フリーで4本の「計6本」を入れる。羽生、宇野ともに四大陸選手権で「フリーでの4本」を成功させた。

ベテラン勢は4回転2種、演技構成点を重視
平昌五輪にむけた“最後の挑戦”のとき

この「本数争い」に食らいついているのが、高い演技構成点が望めるベテラン勢。世界選手権連覇のハビエル・フェルナンデス(スペイン)は、ショート2本、フリー3本の「計5本」の4回転を跳ぶ。演技力や音楽解釈の高い評価を得ており、すでに昨季に300点超えを二度経験している。

また元世界王者のパトリック・チャン(カナダ)も、ショート1本、フリー3本の「計4本」で、若手に挑む。熟練したスケート技術が演技構成点の源になっており、300点超えも照準圏内だ。

この上位6人の争いに食い込めるとすれば、4回転サルコウを跳ぶ田中刑事、高い芸術性で一目置かれているジェイソン・ブラウン(米国)あたりだろう。ソチ五輪銅メダルのデニス・テン(カザフスタン)は怪我がどこまで回復しているかに掛かる。

またロシアの新エースとして期待を集めるミハイル・コリヤダは、挑戦中の4回転ルッツが決まればトップ6に迫ることができるだろう。マキシム・コフトンも2種類の4回転ジャンパーで、ショート・フリー通じて演技が揃うと強い。ロシアは2人の順位合計13になれば、「五輪3枠」を獲得し、来季の五輪出場レースを有利に進める素材になる。

いずれにしてもプレ五輪のシーズンということもあり、果敢に新たな4回転に挑戦できる重要なチャンス。「2016−2017シーズンに、ここまで4回転を成功させた」という記録が、オフのトレーニングに大きく影響する。是非とも失敗を恐れずに、果敢な4回転バトルを繰り広げて欲しい。

ロシアを筆頭に、日本の3人が表彰台に挑む
依然として続く「3回転+3回転」時代

女子は、男子に比べると技術的な「停滞期」でもある。トリプルアクセル成功者の浅田真央とエリザベータ・トゥクタミシェワは出場権を得ておらず、今季に成功させた紀平梨花はまだジュニア。結局は、「3回転+3回転」を最高技術とし、その「質の髙さ」と「成功率」が問われる時代となっている。

日本勢は、今季のシンデレラガールの三原がどこまで躍進できるか。病気を乗り越えた精神力も加わり、四大陸選手権ではショート、フリー通じてパーフェクトの演技で優勝を決めた。同様の力を発揮できれば、世界の表彰台も近い。またシニアデビューの樋口新葉は、スピード感とジャンプの飛距離が持ち味。ジャンプがまとまれば、200点超えまであと少しだ。そして補欠からの出場となった本郷理華も、世界選手権は6位と8位を経験し、世界での評価は高い。日本女子3人が世界トップに挑む力があり、本番のジャンプ次第で順位はいくらでも変動しそうだ。

優勝候補は、世界女王のエフゲニア・メドベデワ(ロシア)だろう。ジャンプの成功率の高さだけでなく、質も高い。空中で手を上げる姿勢をとったり、踏み切り前にステップを入れたりと、難度を上げることで「加点」を稼げる。昨季のGPファイナル以降、出場した全9大会で優勝しており、強さは別格。平昌五輪まで勢いが衰える様子もない。

ここに続くロシア女子は、アンナ・ポゴリラヤ。昨季の世界選手権銅メダルを獲得したことで、一気に自信と風格が身についた。飛距離のあるジャンプと、大人の気品溢れる表現力と、「静と動」両面の魅力がある。今季のGPファイナルで216.47点をマークし銅メダル、欧州選手権もメドベデワに次いで銀メダルと、今季は絶好調を維持している。

米国、カナダも200点超えで対抗
コストナーは30歳での復活劇

このロシア女子に対抗すべく、200点超えを圏内に据えているのは、アシュリー・ワグナー(米国)やケイトリン・オズモンド(カナダ)。ワグナーはパワフルなジャンプと滑りが魅力の25歳で、ミスなく決まった時のインパクトが強い。昨季の世界選手権では215.39点での銀メダルを獲得。今季も後半戦にむけてピークを持ってくれば200点超えが可能だ。

またオズモンドは今季のGPファイナルで212.45点をマーク。滑りにはスピード感、ジャンプにはバネ感があり、可愛らしくてスポーティーなスタイルが特徴だ。ガブリエル・デールマン(カナダ)と共に、カナダの「五輪3枠」を決死の覚悟で目指してくるだろう。

また2季ぶりに復帰したカロリーナ・コストナー(イタリア)が、30歳にして最高の復活劇を見せている。コーチを、エフゲニー・プルシェンコを指導したアレクセイ・ミーシンに変更し、ジャンプを強化。欧州選手権では「3回転+3回転」を決めて銅メダルを獲得した。高いスケーティング技術と表現力はさらに円熟味が増し、まさに身体芸術といえる作品を見せてくれる。

女子はジャンプが接戦となる分、それぞれのプログラムの個性が勝敗の分かれ道になる。今季の曲が運命の一曲ならば来季に継続できるし、課題が見つかれば反面教師に来季の曲を選ぶことができる。いずれにしても来季に“十八番”に巡り会うため、今季は自らの殻を破るような演技を期待したい。

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