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スポーツライター野口美恵のプレスルーム 大会レポート 女子シングル

メドベデワが連覇、宮原も2年連続の銀
ポゴリラヤは3位で、実力者が上位に

文・野口美恵(スポーツライター)

世界の選ばれしトップ6が集う大会「グランプリファイナル2016」が12月8日~11日、フランスのマルセイユで開かれた。宮原知子が218.33点の自己ベストで2年連続の銀メダルを獲得、エフゲニア・メドベデワ(ロシア)が2連覇を達成し、アンナ・ポゴリラヤが初の銅メダルとなった。

宮原はショート、フリーともに自己ベスト 安定感ある演技で「世界の表彰台へ自信」

ジャンプの安定感において右に出る者はいないと言われてきた宮原。しかし今季は重圧もあって、GPシリーズ2戦は回転不足の判定やミスが続いた。このGPファイナルで再び“ミスパーフェクト”らしい演技をみせたい、そんな思いを胸に決戦の日を迎えていた。

ショートはプッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』。恋する少女を演じるプログラムで、振付師からは「笑顔が大事」と言われている。しかし「ぎごちない笑顔になってしまうのが課題」と感じていた。

すると本番、宮原はスタートポーズをとると笑顔でジャッジを見つめる。
「お客さんがたくさんいたので、良い演技をしたいなと思いました。演技最初は難しくても、演技が終わるときには最高の笑顔になればと思っていました」。

冒頭の「3回転ルッツ+3回転トウループ」を決めると、自然に表情もほぐれる。演技後半になるにつれて、スピードのある滑りを見せ、最後のレイバックスピンではジャッジ9人中8人から「+3」の最高評価をもらった。

得点は74.64点で自己ベストでの3位発進となると、「今までの試合の中では一番音楽にのって滑れたと思います。フリーはまた違う自分を表現したい」と意欲をみせた。

そして迎えた翌日のフリー。ショートで得た自信もあり、強い宮原が帰ってきた。曲はホルストの『惑星』。木星の女神へと化し、強い女性を演じる一曲だ。

冒頭からスピード感ある滑り出しで、勢いにのって最初の3回転ループを降りる。「+3」をつけたジャッジもいるほど、キレ味のある飛躍だった。

そのまま大きなミスなく最後まで演技をまとめると、両手でガッツポーズ。自信溢れる笑顔でファイナルを締めくくった。

「ここまで来たからには、しっかり自分ができることをしようと考えました。表彰台は考えずに思い切り滑りました」と言う。

フリー143.69点、総合218.33点で自己ベストを更新しての銀メダル。昨季の世界選手権は5位となったことを思い出し、「しっかり自分の演技ができれば、世界でも表彰台を目指せると思います。今日は自信につながりました」と力強くうなずいた。

メドベデワ、ショートで世界記録更新 不動の首位を守りファイナル2連覇

ロシアの天才少女メドベデワは昨季、GPファイナル、ロシア選手権、欧州選手権、世界選手権と4冠を達成。今季もGPシリーズ2戦を連覇し、17歳にしてファイナル2連覇を目指しての出場となった。

ショートは、すべてのジャンプを演技後半に入れ、しかも連続ジャンプで手を上げるなど、出場選手のなかで最も難度の高い構成。しかしその難しさをまったく感じさせず、軽々とすべてのジャンプをこなした。

79.21点の世界最高得点には、驚くというよりは納得の様子。大歓声が起きると、立ち上がって会場全体に手を振った。

「私は世界新記録と競争している訳ではないんです。ただ、コーチに教わったこと、毎日練習していることを、皆さんに見てほしいという思いで滑りました。皆が喜んでくれたことが何より嬉しいです」と話した。

翌日のフリーも、また違う強さをみせた。冒頭の3回転フリップで珍しくステップアウトするが、弱気になる様子はなくスピードは一段と上がっていく。そして普通は疲れが出る演技後半で、「3回転+3回転」の連続ジャンプを2つ入れた。後半は得点が1.1倍になることから、むしろミスした得点を取り返す、攻めの構成だった。

総合227.66点で自己ベストを更新しての金メダルに、「最初のジャンプでミスをするなんて今までになかったことなので、普段はもっとできるのにという気持ちで一杯です。でもちゃんとリカバリーはできたので満足です。完璧な演技にゴールはありません。年末のロシア選手権でも自分自身と戦いたいです」と、力強く語った。

ポゴリラヤがフリーで巻き返し銅メダル オズモンドも自己ベスト更新

初のファイナル銅メダルに歓喜したのは、アンナ・ポゴリラヤ(ロシア)だった。常にトップグループにいながら、世界の表彰台からは遠かったポゴリラヤだが、昨季の世界選手権で銅メダルを獲得してからは、貫禄ある女性へと変身。初のファイナル表彰台を目指していた。

ところがショートはアクシデントに見舞われる。名前をコールされてリンク中央に出て行く時に、つまづいて腰を痛めてしまう。演技後半の3回転ループでミスをすると、73.29点での4位発進となった。

「まさかの滑り出しで、観客を驚かせてしまいましたね。でも私はアスリートですから小さなケガくらいで慌てません。フリーはもっと演技全体に心を込めて滑ります」と誓った。

そしてフリーは、伸びやかさのあるジャンプと、気品溢れる演技で、ショートとは違う世界観を見事に演じる。ステップシークエンスもコレオシークエンスも最高評価の「+3」がならぶ評価で、フリー143.18点、総合216.47点で自己ベストを更新、銅メダルを獲得した。

「とにかく皆さんの応援のお陰でここまで来られました。ミスはありましたが演技全体を通して、心から満足しています」と喜びを爆発させた。

またケイトリン・オズモンド(カナダ)は、ショートで2位につけたものの、フリーのわずかなミスが響き、4位。自己ベストの212.45点をマークしたが、上位も自己ベストを更新するハイレベルな戦いのなか、表彰台はならなかった。
「ショートはこれ以上ない最高の一日でした。その分フリーは色々なことを考えてしまい、氷と一体化しきれなかったと思います。いまは進化あるのみです」と話した。

今季シニアに上がったばかりの16歳、マリア・ソツコワ(ロシア)は、持ち前の柔らかく優雅なスケートを披露。フリーは自己ベスト更新の133.05点をマークし、5位となった。

「この試合は私にとって小さなオリンピックのようなもので、私なりの最高の演技を見せることが目的でした。もっと良い演技をする自信がつきました」と話した。

また今季はジャンプの安定感に苦しんでいるエレーナ・ラジオノワは6位。
「身長が伸びてから様々な問題と向き合っています。コーチとよく話し合ってロシア選手権では挽回します」とうつむいた。

 結果的に表彰台の顔ぶれは、世界選手権の表彰台経験者3人が揃った。ジャンプ力が均衡する女子は、いかに自分に自信を持てるかが勝利へのカギとなる一戦だった。

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