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スポーツライター野口美恵のプレスルーム 大会レポート 男子シングル

男子は華麗なる4回転合戦
羽生4連覇、宇野も2年連続の銅

文・野口美恵(スポーツライター)

シーズン前半の世界王者決定戦となる「グランプリファイナル2016」が、12月8日〜11日、フランスのマルセイユで開かれた。男子は、羽生結弦が史上初の4連覇を達成。宇野昌磨もフリーで挽回して銅メダルを獲得した。2位は4回転をフリーで4本決めたネイサン・チェン(米国)となった。

ショートは羽生が圧巻の100点超え 宇野は調整ミスで4位発進

羽生にとって、昨季は330.43点の世界最高得点を更新した大会という意味でも、また4連覇がかかるという意味でも、期待と重圧が入り交じる大会となったGPファイナル。迎えたショートでは見事に、期待をモチベーションに変えた。

現地入りしてから、試合前日の公式練習は調子が上がらなかったが、当日朝の練習は絶好調。その状態を「乱調気味でした」という羽生。冒頭の4回転ループは、前のめりに突っかかるような形になったが、耐えた。

「練習でも降りたことがないような変な降り方。綺麗に決まったらノーミスしなきゃと思って緊張したかもしれませんが、むしろ緊張がほぐれました」

そう感じると、続く4回転サルコウの連続ジャンプは難なく決める。演技後半のステップでは、観客に手招きする場面も。

「このプログラムは観客の拍手や声援があってこそ完成する。そういう意味でアドリブでやりました」

まさにプリンスのロックを体現するような2分50秒を演じきった。得点は106.53点で今季最高点をマークし、ダントツの首位発進。
「まだまだ伸びしろがあるプログラム。パーソナルベストを更新したかった」そう、貪欲に答えた。

一方、宇野は時差調整に失敗してショートを迎えた。

「とにかく全て自分の責任。真夜中に試合をしている感じで、6分間練習から力が入らなかった」と言う。

冒頭の4回転フリップは降りたものの、4回転トウループは集中力を欠き転倒。 86.82点での4位発進となった。
「気づいたら試合が終わっていました。とにかくよく寝てコンディションを整えます」と肩を落とした。

一方、海外勢はパトリック・チャン(カナダ)が会心の演技をみせた。4回転トウループを含むすべてのジャンプをクリーンに成功。あとは持ち前のスケーティングと世界観を披露し、観客を酔わせた。99.76点の自己ベストに満足そうにうなずくと、「練習どおり、計画どおりの素晴らしい演技をお見せできたと思います。落ち着いて自分のやるべき事をやりました」と話した。

世界王者のハビエル・フェルナンデス(スペイン)は4回転トウループを成功したものの、4回転サルコウとトリプルアクセルでミスするという痛恨の出来。初優勝を狙っていたものの91.76点で、羽生に大きく引き離された。
「やはりシーズン前半の世界トップ6人という戦いは大変ですね。緊張したのか身体のコントロールがききませんでした」と話した。

羽生が4回転ループ成功で首位を堅守 チェンが4回転4本、宇野が3本を成功

中1日空けたフリーは、大きく順位が入れ替わる下克上の展開となった。

若手の追撃のなか、踏ん張ったのは羽生。冒頭の4回転ループ、4回転サルコウともに成功し、4連覇へ王手をかける。演技後半の4回転サルコウで転倒し、そこからリズムを崩すといくつかのミスはあったが、演技後半のコレオシークエンスでは曲に溶け込むような演技をみせる。プログラム全体の印象を崩すことなく、貫禄ある滑りに仕上げた。

得点は187.37点で、フリーは3位。ショートの貯金を活かして優勝を決めた。得点を待ちながら疲れた表情だったが、総合得点でのランキング「1」が出ると、ホッとした様子で笑顔を見せた。

「これがフィギュアスケート。ショートとフリーを合わせて順位が決まるものです。4連覇という目標を達成できました。これからはショート、フリー共に良い演技をする前提の練習をしていきたいです」
そう語りながらも、やはり悔しさのほうが勝っている様子。

「ジャンプが跳べないと、スケーティングやスピンが疎かになってくる感じがあったので、全日本に向けてしっかり頑張りたいです。もっと点数を上げて、誰からも追随されないような羽生結弦になりたい。今季前半はめちゃくちゃ悔しいので(4回転4本を)今季の後半には完成させたいです」と誓った。

一方、注目の的は、ネイサン・チェン。米国の新エースとして期待される17歳で、今季初戦では「フリーで4回転を4種類5本」という前人未踏の挑戦をした。NHK杯からは「まずは演技を完成させる」として「4回転を3種類4本」にしたが、4本だとしても世界最高難度のプログラムになる。

そして迎えたフリー。4回転ルッツ、フリップ、トウループを次々と決めていく。10年間のバレエ経験で培った美しい踊りも冴え、演技構成点もすべて8点台に乗せた。フリーは197.55点、総合282.85点の自己ベストで銀メダルを獲得した。

「とうとう最高の演技ができました。まだ信じられない気持ちです。とにかく4回転を揃える能力があることを示せたのが嬉しいです」と笑顔を見せた。

また宇野も大健闘をみせた。ショートから2日後のフリーは調子も向上し、タンゴ曲に合わせて、キレのある動きで演技をスタートさせた。3本の4回転はすべて成功し、会場を沸かせる。トリプルアクセルからの連続ジャンプが抜けた以外は、ほとんどミスのない演技で、不安のない滑りを見せた。

自己ベストを更新する195.69点をマークすると、樋口美穂子コーチとともに手を叩いて喜ぶ。いよいよ200点超えを照準圏内に置いた。

「今日は何とかやり切ってホッとしました。やはり課題はコンディショニング。でも去年よりは、GPファイナルという舞台で戦えている実感はあります。皆のレベルが高く、ミスを少なくすることに尽きると感じました」

そう落ち着いた表情で話した宇野。2年連続での銅メダルを獲得し、シニア2年目にしてトップスケーターの地位を確立した。

またショート2位のチャンは、4回転トウループとトリプルアクセルで転倒する出だしとなったが、4回転サルコウを成功。順位は5位に落としたものの「最初の2本をミスしたあとにサルコウを成功できたことが収穫。2種類の4回転を入れる戦いに参入できました」と手応えを感じた様子だった。

フェルナンデスはジャンプのミスが続き4位。「色々と欲を出しすぎて、かえってまとまらなかった状態です。来週のスペイン選手権、そして欧州選手権に向けて、集中し直します」と話した。

男子は、今季の4回転激戦時代を象徴する一戦。17歳のチェンや18歳の宇野、そして進化の止まらない羽生らの4回転が飛び交う、華麗かつハイレベルな戦いだった。

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