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若きネイサン・チェン、4種類5本の4回転を着氷
羽生は猛追の2位、宇野3位

1年後に迫った平昌五輪の前哨戦となる、四大陸選手権が2月16日~19日、韓国・江陵で開催された。男子では、五輪のメダル候補たちが覇権を賭けて激突する、きわめてハイレベルでエキサイティングな試合が繰り広げられた。

ネイサン・チェン、ショートでトップに立つ

羽生結弦、宇野昌磨、ネイサン・チェン、パトリック・チャン、金博洋……現在、世界のトップクラスにいる選手たちが軒並み出場した今大会。五輪が開催される江陵アイスアリーナの氷と会場の雰囲気を体感するだけではなく、時差や公式練習、試合の時間帯などの試合感覚をつかむ上でも、トップ選手にとっては欠かせない大会となっていた。五輪プレ大会にふさわしい、現在のフィギュアスケート競技の最先端がぶつかり合う見ごたえのある試合が展開された。

17日の男子ショート。まずトップに立ったのは第4グループで滑った米国の17歳、ネイサン・チェンだ。今シーズン、シニアに本格参戦すると、その類まれなジャンプの能力で、複数の種類の4回転ジャンプに挑み、今季の全米王者として今大会に臨んだ。今回のショートでは、「4回転ルッツ+3回転トウループ」のコンビネーション、4回転フリップ、トリプルアクセルの3本を決めて、103.12点を出し、「全米選手権でこれに近い得点を出していましたが、国際大会でもそれが可能なことが確認できてよかったです」と喜んだ。

次いで高得点を出したのが、第5グループで滑った羽生結弦だ。冒頭に美しい4回転ループを着氷、だが続く「4回転サルコウ+3回転トウループ」のコンビネーションが「2回転サルコウ+3回転トウループ」になってしまう。「サルコウは考えすぎたのかな」と言うが、気持ちを切り替え、続くトリプルアクセルをしっかりと成功させた。プリンスの曲に乗ってスタイリッシュに表現し、得点は97.04点。演技を終えて、「悔しいです。まあ、仕方ないですね。ループがしっかり決まったことは決まったので、開き直って、あさってに向けて調整しきれればなと思います」と第1声。「ジャンプが決まらないと話にならないので、修正点をしっかり見つけて、自信をもってできるようにしたいなと思います」とフリーを見据えた。

羽生に続いて滑走した宇野昌磨は、今大会でフリーに新しいジャンプ4回転ループを投入している。ショートでは、4回転フリップ、「4回転トウループ+3回転トウループ」のコンビネーション、トリプルアクセルという構成だ。落ち着いた様子で演技に臨み、演技をまとめ上げてフィニッシュすると嬉しそうな笑顔がこぼれた。100.28点と、ISU主催大会では、自身初の100点超えを達成。「ジャンプはやっと今シーズン初めてまとめることができて嬉しかったですし、終わった後すごくほっとしました。身体の動きが良い状態で滑ることができて、疲れたという感じがしなかった。メンタルも身体も良い調整ができたんじゃないかと思います」と、好スタートを切った充実感をにじませた。

ショートの順位は、チェン、宇野、羽生の順。金博洋(中国)は「4回転ルッツ+3回転トウループ」で着氷が乱れたが、以降のトリプルアクセルと4回転トウループはしっかりと決めて、4位発進。パトリック・チャン(カナダ)は通常は得点源となる「4回転トウループ+3回転トウループ」で最初の4回転を転倒してしまい、5位で折り返した。

銀メダルを獲得した冬季ユニバーシアード(カザフスタン)からの連戦となった日本の田中刑事は、冒頭の4回転サルコウが3回転になり、11位スタートでフリーに臨むことになった。「グループ1番滑走というところでの気持ちの切り替え、本番でのタイミングと跳びたい気持ちが合わなかった」と振り返った。

肉薄する羽生をかわし、ネイサン・チェンが四大陸選手権初優勝

19日のフリー。最終グループの上位3選手の滑走順は、宇野、羽生、チェンの順だった。

宇野は、冒頭に今回の新しいチャレンジである4回転ループに挑み、完璧に着氷した。試合初挑戦での成功は、宇野の本番での強さを再び証明することとなった。4回転フリップ、2本の4回転トウループなどを着氷していくが、最近は安定していたトリプルアクセルが2本とも転倒などのミスに見舞われる。「アクセルは踏み込みが気づいたら甘くなっていた。気合で降りるつもりで跳ばなくては」と悔やんだ。187.77点を出し、総合288.05点で上位2人を待った。

追う立場となり、気迫が全身にみなぎる羽生は、フリー『ホープ&レガシー』でみごとな集中力を見せた。冒頭の4回転ループ、4回転サルコウを綺麗に決める。練習では決めていた「4回転サルコウ+3回転トウループ」が「2回転サルコウ+1回転ループ」になり、コンビネーションを1つ消費してしまったが、そこからは猛然と巻き返して、後半に畳み掛けるように4回転トウループ、「トリプルアクセル+3回転トウループ」、さらに「4回転トウループ+2回転トウループ」、トリプルアクセル、と大技を実施。これは予定の要素から難易度を上げる方向に滑りながら構成を変更したもので、「計算しながら」いったリカバリーで演技中の冷静さをも証明するかたちとなった。ますます磨かれ洗練の度合いを増した表現でも観客を自分の世界に引き込み、力強いフィニッシュを見届けた観客は熱狂で応えた。自身初となる4度の4回転を成功させたフリーは今季最高の206.67点、総合では300点を超える303.71点が出ると、羽生は破顔して喜んだ。

「今日のフリーはすごく挑戦的にやりました」と振り返った羽生。「自分のなかでレベルアップできたなと感じられるフリーだったなと思います。4回転4つ、後半にトリプルアクセル、それもコンビネーション込みで、試合で決められたということは、予定通りの構成でないにしても、収穫としてよかった」。4回転を5本跳ぶ可能性について問われると「できるなという感覚にはなりました。トリプルアクセル2本は外したくないので、まだ現実的ではない。ただ、視野には入ったという感覚があります」と、今回の試合で確かな手ごたえを得たようだ。

「正直言うと、勝ちたかった。四大陸では銀メダルしか獲れたことがない」と悔しさを見せながらも、「今回がいちばん楽しかった」とどこかすがすがしい表情をしていた羽生。次につながる試合になったに違いない。

最終滑走のネイサン・チェンは、「4回転ルッツ+3回転トウループ」のコンビネーション、4回転フリップ、4回転トウループ、「4回転トウループ+2回転トウループ」のコンビネーション、4回転サルコウと、5本の4回転を跳び、ISU公認大会で初めて4種類の4回転5本を成功させる記録を作った。前半にジャンプを固め、後半にスピンとステップを集中させる、完全にジャンプにシフトしたプログラムである。得点は204.34点で、フリーだけなら羽生と2.33点差の2位。終わってみれば、ショートの点差が勝敗の決め手となり、チェンが総合307.46点で四大陸選手権の初優勝を果たした。羽生は総合2位。宇野は総合3位となり、四大陸選手権の初メダルを手にした。4位がパトリック・チャン、5位が金博洋、6位がジェイソン・ブラウン(米国)となり、田中刑事は13位という最終順位となった。

男子メダリストの会見では、五輪の予想される試合日程について話題に上った。チェンは「いつものISU大会と比べると多少変な感じはしますが、順応するしかありません。全米選手権が似たようなスケジュールなので、その点では僕はなじんでいる」と話し、羽生は「練習が終わったあとに近くの場所で小休憩をして、また戻ってきました。フリーは感覚としては良かったですし、疲労も出なく、五輪への自信になりました。同じ会場で、同じような時間でということで、実際にイメージをしながら試合に臨めましたし、良いプレオリンピックになったなと感じています」とした。宇野は「早く寝て、早く起きるようにしたい。やってみた感じ、大丈夫かなと思います」と、三者三様の答え。五輪を意識した試合運びを経験したことは、実際の五輪の舞台でも最終グループの激闘を繰り広げるだろう彼らにとって大きな収穫となったに違いない。

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