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インタビュー

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インタビュー/文・折山 淑美

戻ってきた期待感

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 一人で出かけた7月のヨーロッパ遠征。最初のマドリッドでは11秒25のシーズンベストを出し、2戦目のスイス・ルツェルンでは11秒34。3戦目のベルギー・ナイトオブアスレチックは11秒37ながら2位と自身でも納得できる結果を出した。

「もう少し(記録が)出るかなと思ったんですけど、日本選手権後の練習で取ったタイムの中で一番悪かったから、『わぁ、疲れているんだろうな』と。でも状態は良くてベースも上がっていたので、今シーズンはいつ自己ベストが出てもおかしくない状態で来ているとは思います」

 昨年9月のアジア大会前くらいから「走れる!」という感覚を持てるようになったという。だが結果が伴わず、アジア大会には自信を持てないまま臨んだ。ところが10月の国体では予選で11秒30をマーク。その記録は今年の世界選手権100mの参加標準記録11秒33を突破するもので、精神的にも余裕を持って冬期トレーニングに入れたという。

「去年の春先からオーストラリアへ一人で合宿に行くようになったことも含め、自分で練習メニューを考えトレーニングできるようになりました。今、自分が何をやらなければいけないのか、何をやった方がいいのかというのをきちんと考えられるので、どこにいても淡々と自分のペースを保てていると思います」

 本来は100mの方が好きだが、今年は200mでまだ標準記録を切っていなかったこともあり練習量を積むことになった。それが功を奏し、「今年は200mがすごくいいのでは」と期待を寄せる。4月の織田記念ではレース中に痙攣が起きたが、それも走れている証拠だと考えた。5月にはバハマの世界リレーから帰国直後のゴールデングランプリの200mで23秒11を出して参加標準記録を突破。100mでも、6月上旬のアジア選手権で追い風参考記録ながら11秒23で走り、2大会ぶりのタイトルを獲得した。

「ベストを更新したいという気持ちは毎回あるけど、なかなか出ない……。でもそれは強く意識した時よりも、自然に思えた時に出るんじゃないかなと思うんです。あとは運とタイミングだけでしょうね」そう福島は穏やかな表情で話す。

不調でも諦めなかったから迎えられる、運命の北京

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 福島の100m11秒21と、200m22秒89の自己ベストは2010年に出したもの。ロンドン五 輪があった2012年からは少し低迷する時期もあり心に迷いも生まれた。2013年7月に前大会の女王として臨んだアジア選手権100mで2位になったが、記録は11秒53。11秒29で優勝した中国人選手を見て、「私も以前はあんなに速く走っていたんだ。もうあんなに速く走れないかもしれない」と思ったという。

「練習をしていてもいっぱいいっぱいで、レッドゾーンぎりぎりまで針を振り切っているみたいな感じでした。ただ、そういう時でも11秒2台に戻したいとか前のように走りたいと思うのではなく、『自己ベストを出したい。11秒0台や10秒台で走りたい』と思ってやってきたんです。私はダメな時でも見据えているところは変えていません。目標を上げたり下げたりしないで、ずっと11秒0台や10秒台を目指してきたからこそ、今があるのだと思っています」

 いろいろな迷いや考え方を整理できたことで心に余裕が生まれ、今は穏やかな気持ちで競技に取り組めているという。アジア選手権で追い風参考ながら11秒23を出せたり、マドリッドでシーズンベストを出せたりしたのも、些細なことを気にせず何事にも動じなくなったからではないかと。「図太くなったんでしょうかね」と恥ずかしそうに笑う福島。

「体の調子がいいから心に余裕を持てるのか、心に余裕があるから体の調子がいいのかは、鶏が先か卵が先かというのと同じでわかりません。でもとにかく今はものすごく調子がいいなって。だからあともうちょっと頑張って、8月の北京で自己ベストを出せればいいですね」

 北京は福島にとって、スプリンター人生のスタートの場だ。初めて出場したシニアの世界大会が2008年北京五輪だったからだ。

「やっと状態が良くなって迎える世界選手権が北京というのは、何かあるんじゃないかなって気がします。北京五輪で走って今回も出られる日本人選手は多分、金丸祐三さんと私だけだと思うから。そういう運命を持てるのは限られた一握りの人間だけなのだから、絶対にプラスにしたい。私は北京五輪からトントンと成長してきたので、また北京で次のステージが始まればすごくいいなと思います」

必須と誓う、準決勝での勝負

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 そんな気持ちで迎える4回目の世界選手権。目標は1本でも多くのレースを走ることだ。初出場の2009年は100mで2次予選敗退、3ラウンド制だった200mは予選敗退だったが、ともに100分の数秒差で準決勝進出を逃す惜しい戦いをした。そして2011年世界選手権は100m、200mともに準決勝へ進出したものの8位。その後は2012年ロンドン五輪も2013年世界選手権も予選敗退に終わっている。 「今回、予選通過は当然として、準決勝で勝負できるようにしたいです。3組2着+2だから、2着に入らなくても3着か4着に入って、プラス争いができるようにしたい。マドリッドの予選では5位だったけど、同じ組で3位になったブラジルの選手が11秒23でプラスで決勝へ進みましたから、私ももうちょっと頑張れば3、4番くらいにはいけるんじゃないかと。決勝にはもちろん出たいけど、まずは準決勝でマドリッドやルツェルンでしたレースのもうワンランク上の戦いをして手応えを感じたいですね」

 その意味で100mも狙うが、200mの方がチャンスはあるのではという考えも生まれてきたという。今年は200mの前半の入りがとても良く、日本選手権でもしっかり走れていれば22秒台が出たのではないかと思うからだ。

「200mのトップは21秒台で速いけど、8番までの差は100mより大きくて、22秒5を出せばかなりいけると思うんです。日本選手権の決勝もスタートは良かったのに、コーナーの抜けがちょっと窮屈になったから後半疲れてしまった。それがなければ多分、22秒台は出ていたでしょうから、技術的な部分を磨くため、練習でスタートや250m走を血へどを吐きながらでもやってみようと思います。今年は30秒切りを目指して全力でやります」

 来年のリオデジャネイロ五輪も見据え、精神的にもひと皮剥けた福島は、笑顔で運命の北京に臨もうとしている。